クラスの美少女ギャルから嘘告される事が判明したので、先手を打ってそのギャルを堕とします! そしてそのギャルはいつの間にか俺にぞっこんになる

栗坊

どうやら俺は嘘告されるらしい

 俺の名前は松倉和久まつくらかずひさ。どこにでもいる普通の陰キャ高校2年生だ。


 季節は秋。9月も半分終わり、サウナの中にいるような夏の暑さもそろそろ過ぎ去ろうかとしていたそんな時期。


 俺は学校が終わると、いつもの如く腐れ縁の幼馴染…岸和田東吾きしわだとうご、通称「トーゴ」と共に下校していた。


 校舎を出て、校門付近に差し掛かかった所で、俺はふとある事を思い出して立ち止まる。


「あっ、やべ! 教室に数学のプリント忘れた。確か明日提出だったよな?」


 明日提出の宿題の事をすっかり忘れていたのだ。数学の教師は厳しく、宿題を忘れるとチクチクお小言を言われてしまう。


「明日授業が始まるまでにやればよくね? 焦るこたぁないだろ」


 友人はそんな呑気な事を言ってくるが、明日の数学の授業は1限だった。解くのが間に合わない可能性もある。


「ちょっと取って来るわ! 先に帰っててくれ」


「しょうがねぇなぁ。待っててやるから、とっとと行ってきな」


「すまん」


 俺はトーゴをその場に残し、教室に向かってダッシュした。



○○〇



 校舎の中は比較的閑散としていた。多くの生徒はもうすでに帰ったか、部活動に参加するかしているのだろう。


 階段を1段飛ばしで2階に上がり、自分のクラス…2年2組の窓際1番後ろの席を目指す。そこが俺の席である。アニメやラノベなどで、よく主人公が座っている事から通称「主人公席」と呼ばれている場所だ。


「あったあった」


 無事机の中にあるプリントを回収した俺はそれを鞄に入れ、待たせている友人の元へ戻ろうと教室を出た。


「「「ギャハハハ!!!」」」


 と、そこで隣の教室…2年3組の教室から突然大きな笑い声が聞こえてきた。俺は何事かと立ち止まり、教室の扉から室内を覗いてみる。


「茉莉本当に大富豪弱いよねぇ~」


「うぅ…」


「ギャハハハ! 茉莉はなんというかさ、勝負事すべてに弱いよな」


 そこでは何名かの生徒が集まって、トランプの大富豪をしていた。見た所、ウチのクラスと隣のクラスの陽キャ連中のようだ。


 集団の中心にいるのはうちのクラスのトップカーストに君臨している鳥羽隼人とばはやとだった。典型的な俺様タイプのお調子者といった感じの人間で、俺とは馬が合わず、あまりしゃべった事はない。


 そして大富豪に負け、涙目になっている金髪の女の子は七尾茉莉ななおまつり。彼女もウチのクラスの陽キャグループの一員だ。しかしグループの中ではどちらかというと下のポジションだった。


 なんというか…見た目も垢ぬけており、性格も明るいギャルといった感じではあるのだが、いまいち陽キャグループに馴染めきれていないと言えばいいだろうか。


「さぁて、それじゃあ大富豪に負けた茉莉には罰ゲームと行こうか!」


「そ、そんなぁ~。隼人、許してぇ」


 七尾さんは半べそをかきながら鳥羽に詰め寄る。だが鳥羽の方は無慈悲にもそれを軽くあしらった。


「ダァメ! 何がいいかなぁ? そうだなぁ…。う~ん…決めた! 茉莉には罰ゲームとして『嘘告』をしてもらおうか」


「ヒューーー!!! 盛り上がってまいりました!」「キャハハハ! 罰ゲームの定番よね!」「で、隼人君。茉莉を誰に告白させるのさ?」


 それを聞いた周りの陽キャ連中から歓声が上がる。


 「嘘告」…要するに嘘の告白だ。誰か適当な相手に告白し、相手がそれを信じて告白を受けた後に嘘だと暴露して笑い者にする趣味の悪い行為。


 俺にはそれの何が面白いのか一切理解できなかった。


 嘘告なんてした方もされた方も嫌な気分になるだけじゃないか。面白いと思うのは性格の悪い外野だけだ。


 やはり俺は彼らと馬が合いそうにない。こんな話、聞くだけでも不快である。


 そう思い、その場から立ち去ろうとした。あまりトーゴを待たせるのも酷だ。大分マシになったとはいえ、まだ外は暑い。


「で、誰に嘘告するかだが…ウチのクラスに松倉って陰キャチー牛いんじゃん。あいつ」


 俺は一瞬、自分の耳を疑った。


 「松倉」って…俺の名字じゃないか。うちのクラスに松倉姓の人間は他にいない。もっと言うと2年全体でも俺しかいなかったはずだ。


 という事は…嘘告の相手は俺?


 詳細を聞こうと2年3組の教室に近づき、静かに聞き耳を立てる。


「や、止めようよ。嘘告なんて可哀そうだよ…」


 七尾さんはあのグループの中ではまともな倫理観を持っているようで、それを必死に止めさせようと鳥羽に意見を述べた。ところがそんな七尾さんに対し、鳥羽は心底侮蔑ぶべつしたような表情をして彼女に言葉を返す。


「あぁ!? 茉莉…お前『可哀そう』とか言って、本当は罰ゲームやりたくないだけなんだろ? お前の心の中なんてお見通しなんだよ!」


「そ、そんな事…罰ゲームはやるよ…。でも他の事にしない?」


「いや、もう嘘告に決定した。なぁお前ら! 茉莉が嘘告で陰キャ騙すところ見てみたいよなぁ!」


「ウチも見たい!」「チギュアアア!!!」「うっそこく! うっそこく!」


「ほら、みんな見てみたいってさ。まさかみんなが見たいつってんのに、やらないなんてそんな空気の読めない事しないよなぁ? 茉莉?」


「うぅ…分かったよ。やります」


 七尾さんは周りの空気に押されて渋々それを承諾した。


「ごめんね、松倉っち…」


 そして小さな声で俺に謝罪する。


「そ、それでいつ嘘告すればいいの?」


「ああ、それなんだが…今回の嘘告はある程度期間を設けてやる事にした」


「どういう事?」


「最近は『嘘告』が有名になりすぎて、陰キャ共も何の脈もない相手から告白される事を警戒するようになってんのよ。バレちゃ興覚めだ。だから茉莉、お前はあの陰キャに気があるフリをして、しばらくあいつと絡め。あいつを惚れさせろ! どうせ陰キャなんて女が親し気な顔して近づきゃ容易く騙されるだろ。そうだな…期間は1、2カ月ぐらいだ」


 一呼吸おいて鳥羽は話を続けた。


「で、それを動画で撮ってY〇utubeやティッ〇トックに投稿するんだ。これは大バズリ間違いなしだぞ! 面白い上に金儲けもできる」


「流石隼人、天才!」「いいね!」


 取り巻き達が鳥羽のとんでもない計画を褒め称える。


「さ、流石にそこまでやるのは…」


「あぁ!? お前さっき『やる』つったよなぁ!? アレは嘘だったって事か? あーあ、茉莉は俺たちに嘘をついたのか! 仲間だと思ってたのによ!」


「うぅ…わ、分かりました…」


「ウェーイ!」「茉莉ならそう言うと思ってたわ!」「盛り上がってまいりました!!!」


 七尾さんは鳥羽たちの恐喝に涙目になりながら頷いた。俺の中に憐みの感情が浮かんでくる。


 …酷いな。こんなの半分イジメみたいなものじゃないか。嘘告される側の俺がこんな事を言うのもなんだが、彼女が不憫だ。


「隼人君。俺ちょっち小便行ってくるわ」


「やべっ!」


 七尾さんが嘘告を承諾した所で、陽キャグループの1人がトイレに向かおうと教室の出口へ向かって来た。俺は彼らに見つからないよう、慌ててその場から離れた。



○○〇



「遅かったな、待ちくたびれたぞ」


 教室から離れた俺は校門で待っているトーゴの元へ戻った。


「とんでもない話を聞いてしまった」


「なにが?」


 俺は先ほど聞いた話を彼に話した。


 嘘告自体は俺がそれを断れば終わる話だ。でもそれでは嘘告に失敗した七尾さんがまた奴らに何かしら言われてしまうだろう。


 俺は彼女を救ってあげたかった。何か良い解決策はないものだろうか。


「嘘告を成功させるために惚れさせる…ねぇ。それなら逆転の発想で、お前が七尾さんを惚れさせればよくね? なんてな。ハハッ」


 トーゴの言葉を聞いた俺の頭に電流が走った。


 そうか。その手なら…。


「…それ、いいな。採用」


「えっ? 冗談だったんだけど…」


 七尾さんを救うには彼女を鳥羽グループから離れさせる事が重要だと俺は考えた。しかし特に仲の良くない俺が「あのグループから離れろ」と言った所で彼女は聞き入れはしないだろう。


 だが惚れている相手からの言葉ならば…聞き入れてくれるのではないだろうか。


 俺は友人の助言により、嘘告してくるであろう七尾さんを逆に惚れさせる事にした。彼女を鳥羽グループから救うのだ。



◇◇◇


※当作品は「お試し連載」となります。1週間ほど連載して評判が良いようなら本格連載に入ります。


※投稿予定

1/5(日)~1/11(土)。1日2話更新で7時と19時に更新します。計14話


面白そう、続きが読みたいと思って下さった方は作品のフォローと☆での評価をお願いします。

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