異世界行けば彼女ができる?向かった世界は想定外だった……

神戸近区

第1話 俺には愛車が重かった

車が恋人……まあ人ではないし彼女とか居た事はないが。今の俺、轟 整人とどろきせいとにはこの車を運転する時間が一番大切だった。


 今から11年前親父が小さな古い車に乗って帰ってきた。友達に譲ってもらったらしい。最初はこんな汚くて小さいの乗りたくはなかった。家には大きい車が有る。2列目なんか足も伸ばせる。


でも親父曰くは「これを修理して乗りたい」らしい。母からは怒られてたが本人は楽しそうだった。少しずつ直されていく車。ネットで調べながら部品を変えて行く親父。楽しそうだった。


 少しずつ手伝った。外して壊れている所、消耗品は交換する。使えるなら清掃してまた戻す。部屋の掃除は嫌いだが車を修理するのは楽しかった。


 その年俺は初めて親父の誕生日にプレゼントを買った。シートカバーだった。前に座席は掃除してそのまま使うと聞いたから。あれは洗っても……座りたくなかった。ものすごく喜ばれた。


 完成までは2年以上の時間がかかった。主に休日の作業なんでなかなか進まなかったが初めてエンジンがかかった時嬉しかったのを覚えている。車検も合格した。


 初ドライブは俺と親父。母が「私は2番目以下なのね」と泣き真似してた。


走り出した時は驚いた。加速と音がすごい。親父は制限速度で走ってると言っていたが、道路が近く見えるからか凄く早く感じる。楽しい。5年後18になったらすぐに免許を取得した。


 親父はあの車を譲ってくれた。練習用に少々当てても修理できるし扱いやすいサイズだからと。


 この車は高齢だし傷を付けたくない。安全運転した。壊れたら直したいので自動車整備の専門学校に行った。卒業し、自動車整備士として働いた。そんな時に運命の日を迎えた。


 その日は休日で遠出をしていた。途中の道の駅に休憩しようと寄って車を停めた記念に車をスマホで撮影しようとて車の前で屈んだ時、愛車の後ろに勢いよく車が衝突した。文字通り愛車が胸に飛び込んできた。気付いた時には車の下だった。いくら好きでも重すぎた。


 この時俺は21歳年彼女いない歴=年齢のままこの世界の時間が止まった。



「あれ?生きてる?」不思議だった。痛みもない。


急に何かが近付いてきたが何かわからない。


「その車がもう少し君と色々旅したいと願ったいてな」突然話かけられた。


「車がですか?」


「長時間大切にして話しかけたりもしているだろ?生物以外にも感情が生まれたりも有るんだ」


「それは少し嬉しいですね。一方通行じゃなかったんだ。」


「今の世界では君の人生はもうすぐ終わる。違う世界に行ってみないか?」


「異世界転生とか転移とかですか」


「話が早いな。そうだ。そのまま移動するから転移かな?」


「その世界では車は?」


「残念だがそのような世界はないな。自分で作れば別だが」


「かのじ……異性と出会いが多い世界とかはないですよね?」


「有るよ。剣と魔法の世界だがいいか?」


「ゲームのような世界ですね。そこでお願いします」


「ではもう君には時間がないからすぐに送るよ。最初は敵となるものが少ない場所にしておく。移動後即戦闘とか無理だろうし。とりあえずユニーク魔法も一つ付けておくね。何か最後に聞くことは?」


「最後……ですか特にないな。ではあなたは神様ですか?」


「そう思ってくれていいよ。そんな質問でよかったのか?」


「せっかく頂けた命なので聞くより直接行って楽しみたいかと」


「では気を付けてな。向こうで死んだらこちらに戻り君の人生も終了となる。できるだけ長く楽しむことをお勧めする」




 気が付くと俺は周りに何もなく草だけが生えている大地に居た。近くには動物とかの気配もない。


神様、敵の少ないというよりこれは……生き物の少ない場所では?見える範囲草しかない。しかし水も食料も持っていない。これ夜までに水見付けないと駄目なやつでは……。来て早々命の危機を感じる。


こういう時は方角もわからないし今向いてる方向に進むか。


 翌日倒れた。夜も安心して眠れないし辺りに人もいない。もう無理だ。神様助けて。


その後、気が付いた時に横に人が居て話しかけられた。


「君大丈夫?見ない顔だけどどこからか逃げてきたの?」


なんか外人さんみたいな金髪の綺麗な女性だった。


「助けていただいてありがとうございます。近くに町ってありますか?」


「君も逃げてきたのかな?私も前に近くの国から逃げてきたんだ。丁度戻るとこだから一緒に行こう。困った時は助け合いだしね」


「ありがとうございます。助かります」


「なんか難しい話し方するね。いい家で生まれたのかな?というかもしかしなくても男だよね?」


「そうで……そうだよ。男だよ。後何か飲むものないかな?」


「その話し方がいい。水なら有るよいる?」


「貰えるなら。ありがとう」


水がこんなにおいしく感じるとは。木の実のような食べ物も少しくれた。


「少し元気になったよ。ありがとう。今からでも夜までに町に着くかな?」


「行けるよ。行けるけど……もしかして異世界の人?」


「な……なんで?」


「黒髪でこの辺りを知らない。でも難しい事を知ってそう。昔来た異世界の勇者の聞いている特徴に似ている。」


「もし異世界人なら何かあるのか?」


「町に入るときとか気を付けないと。あと強力な魔法と魔力を持っているから狙われる」


「危ない感じ?」


「ある意味」


「そうか……助けてもらったし本当のことを言うと異世界の人間だよ。分からないこと多いけど教えてもらえたら助かる」


「そうなんだ。あのね……その対策というか安全のためというか……提案が有るんだけど。結婚しよ」


「はっ?はい?」


「いいんだ。ありがと~。まだ知り合ったばかりだけどよろしくね」


「その”はい”ではなく。嫌ではないよ。君みたいな綺麗な人と。でもお互いよく知らないのに結婚って……せめてその前にお付き合いとか」


「君ではなくて”モモ”だよ。今多分18歳。いつ生まれたのかよくわからないけど。結婚してないと町に入るのに大変かもしれないよ」


その時は意味が分からなかった。初の彼女欲しいと言いながら結婚を申し込まれたことも。この異世界どうなってるんだろう?


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