第四話:陰謀うずまく商人街! オカマ剣士、札束にも揺るがず

 街中でゴロツキ退治をこなし、ますます信頼を得ているジュン。あのタルーネ商業街はかつてよりも心なしか空気が澄み、ルイナの商家も安定して店を開けるようになった。レイは相変わらず陽気で、ルイナはますます感謝を示す。まったりとした時間が訪れ、そろそろ穏やかな日々に戻れるかと思いきや――。


 ある日の午前、ジュンがルイナの家先で剣の手入れをしていると、華々しい衣装をまとった男が、取り巻きを従えてやってきた。つややかな口髭、ギラギラの金の指輪、そして鋭い目つき。

「ほう、ここがあの“オカマ剣士”が居候している店か。噂はかねがね聞いておるぞ。」

 取り巻きがワハハと笑い、まるで劇場の悪役でも出てきたかのような雰囲気だ。


「何かご用かしら?」

 ジュンは剣を鞘に収め、余裕たっぷりに振り返る。ルイナが少し緊張した面持ちで横に立つ。


「俺はガルバード。この辺りの取引を取り仕切る大商人だ。最近、お前さんが余計なマネをしてくれたせいで、うちの配下たちが商売しづらくなってな。困ったことに、あんたが一々手を出すから、うちの“人材”が動きづらいんだよ。」

 ガルバードは目を細め、不敵な笑みを浮かべる。


 なるほど、どうやらこの男、裏で弱い商人に圧力をかけ、好き勝手な取引条件を押し付けていた大悪党らしい。ジュンにとっては格好のターゲットと言える。


「へぇ、大商人ねぇ。悪いけど、あたしが追い払った連中なんて、最初からいない方が街にはいいんじゃない?」

「ぬぅ…」ガルバードは面白くなさそうに鼻を鳴らす。


 取り巻きの一人がコソコソと袋を取り出し、ジュンに差し出す。

「ここに金貨がある。あんた、もうこれ以上首を突っ込むな。わかるな? 自分の身のためにも悪い話じゃあるまい。」


 金で黙らせる気か、そりゃあまた安い手段だ。ジュンはルイナの震える手を軽く握り、“安心してていいわよ”と目で合図する。大商人に従えば楽な道が開けるかもしれないが、このオカマ剣士がそんな甘い誘惑に乗ると思うかね?


 ジュンはふっと微笑む。

「悪いけど、オカマは人情に厚いの。金で人情は買えないわよ。」

 そう言って、袋を手で払いのけると、ガルバードはふくれっ面で怒りの声を上げる。

「ふざけるな! 貴様ごときが俺を拒否するとは…。いいだろう、ならばこちらにも考えがある。」


 突然、取り巻きがジュンに殴りかかろうと踏み出す。しかし、当然ながらその程度の動きはスローモーションも同然。ジュンはくるりと回り込んで腕を取ると、そのまま相手を軽々と投げ飛ばす。

 ドスン! 地面に転がる取り巻き。周囲の商人たちが「ひゃっ」と声をあげて後ずさる。


「痛い目見たいならいくらでも付き合うわよ? でも、あたしは警告したわ。人情は金じゃ買えないってね。」

 ジュンは腰に手を当て、じっとガルバードを睨む。ここで彼女(彼?)は勝利宣言の決め台詞を放とうか少し迷い、ここぞという時が来たと判断する。


「…オカマなめんじゃねぇぞ、ゴラ!」

 ビシィッと指を突き出すジュン。その気迫にビビったガルバードは、悔しそうに唇を噛みしめ、

「覚えていろ、必ず後悔させてやるからな!」

と吐き捨てるように言って退散した。


 周囲に立ち尽くした商人たちは、拍手喝采とまではいかないが、ホッとした表情でジュンに感謝を告げる。ルイナもレイも、やれやれと胸を撫で下ろしている。


「ジュンさま、ありがとうございます。あの男、街中で権勢を振るっていましたが、ここまで真正面から立ち向かった方は初めてです。」

「ま、これで終わるとは限らないわね。大物っぽいし、根はもっと深いかもしれない。でも、人を脅して儲けた金なんて汚いわ。そんなもの許すわけにはいかないじゃない。」

 ジュンは肩をすくめ、余裕の笑みを見せる。


 レイは両手を合わせてうっとりした表情。

「ジュンちゃん、あんたほんっと素敵ねぇ。金にも動じず、悪には一歩も引かず、街の人々を守るだなんて! オカマヒーローがここに誕生ね♡」


 ナレーターとして言わせてもらえば、ここまでくるとジュンは街の良心の具現化のようだ。笑いと人情、そして圧倒的な強さで、理不尽をなぎ倒していく。この町は今、オカマ剣士ジュンという新たな守護者を得たと言えよう。


 しかし、ガルバードは簡単に引き下がる相手ではないだろう。腐った人間はしぶとい。次なる刺客や陰謀が、この小さな商業街を覆うかもしれない。


 第四話、ここまで――次回、さらなる波乱がジュンを待ち受ける予感。オカマ剣士、金の誘惑を蹴飛ばして清廉への道を行く! 乞うご期待。


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