第二話:オカマ剣士、街で大暴れ!? 友情(?)のオカマ同盟結成なるか

 さて、オカマ剣士ジュンが野党崩れのチンピラを追い払った翌日、我々はあの救われた女性――ルイナの案内で、小さな街へとたどり着くことになった。その名も「タルーネ商業街」。辺鄙な森のそばにあるわりには、そこそこ賑わっている。商家が多いらしく、通りには露店や道具屋、薬草売りなどが立ち並び、ちょっとした活気を感じる。


 ジュンは、ルイナとともに彼女の家――まあ商家兼自宅といったところだろうか――へ足を踏み入れた。そして玄関に入るや否や、突如として華やかな声が響き渡る。


「キャーッ、ルイナったら遅かったじゃない! あんた大丈夫だったの!? …って、あらやだ、そっちの素敵なヒトは誰!? あたしの鼻がピンときたわ、絶対面白いヒトでしょ!」


 そこには、まるで孔雀のような派手な衣装に身を包み、目尻にキラッと光るアイラインを引いた、見た目にも分かりやすい……オカマがいた。


「レイ、紹介するわ。この方はジュンさま。森でわたくしを助けてくださった恩人なの」

「ジュンっていうのねぇ~。はじめまして、あたしはレイよ。オホホ、気軽にレイちゃんとでも呼んじゃって♡」


 ジュンは思わず眉をピクリ。

「ちょっと、なによレイちゃん、あんたもオカマなの? まさか異世界でお仲間ゲットとはね! オカマなめんじゃねぇぞ、ゴラ! あたし、人情に厚いオカマ剣士ジュンよ♡」

 するとレイは両手を胸元で合わせ、キラキラと瞳を輝かせながら、

「キャー! 気が合いそうだわ~! 男女の枠を飛び越える最強の存在、ステキ! ほんっと興奮しちゃう! これから毎日が退屈しなさそうね♡」


 はい、来ました。早々に怪しげな同士が増えましたよ、ナレーター的にはツッコミどころ満載だ。ここは一応普通の異世界ですよ? だが二人のオカマ剣士(片方は剣士じゃなく商家の友達だが)が出会うとは、なんとも予定調和(?)な奇跡。


 ジュンはレイに歓迎され、ルイナの家に一部屋借りることに。

「ほんと、ありがとうねぇ。あたし、しばらくこの街でお世話になるわ。宿代わりってのも悪いし、なにかお手伝いするわよ♡」

「ジュンさま、そんな、お気になさらず…。昨日助けていただいたご恩を少しでもお返ししなければ!」

「いいのよルイナちゃん。オカマは人情に厚いの。助け合いましょ♪」


 ほら、ここでお決まりのオカマ名言が出ましたね。あたし(ナレーター)、既にこの世界観に慣れつつある自分が怖い。


 その日の午後、ジュンが街中を散策してみると、どうにも治安がよろしくない場面に遭遇。路地裏で、小柄な男が大柄なゴロツキに絡まれている。どうもその小柄な男は露店商で、朝仕入れた品をまけろとか、道具代を踏み倒すぞとか脅されているらしい。


「はぁん? 弱い者いじめ? この街、そんなのが横行してるのね。オカマなめんじゃねぇぞ、ゴラ! 人情の前には理不尽は通用しないって、あたしが教えてあげるわ♡」


 ジュンはスッと鞘から剣を抜き、露店商を囲むゴロツキ軍団の背後に回り込む。そっと耳元で声を掛けるのだ。


「お・ま・た・せ♪ 割引要求するなら、ちゃんと丁寧にお願いしないとダメじゃない? タダでゆるして欲しいなら、土下座でもしたらぁ?」


 びくぅっ! とゴロツキどもは飛び上がる。

「な、なんだてめぇ!? 女か!? いや男か!? なんだその気持ち悪…」

 ブチィッ…ジュンの額に青筋が浮かぶ音が聞こえそうだ。


「男でも女でもない最強の存在、それがわたし♡ あんたら、調子に乗ってると血ィ見るわよ。ま、血はあんまり見たくないけど、こっちも人情に訴えたいじゃない。いい子にしなさい♡」


 その瞬間、ジュンはヒュッと剣を振り、相手の腰に下げた棍棒をカッと一撃で叩き落とす。軽々とした手さばき、そしてミリ単位で外すことなく相手の武器を無力化する妙技! さすがはフェンシングで鍛えられた剣筋、その精度は並外れている。


 ゴロツキどもは「ひぃーっ!」と悲鳴をあげ、一目散に逃げ出す。露店商は感激に顔をくしゃくしゃにしてお礼を言う。

「ありがとうございます! あなたのおかげで助かりました…私の大切な品々を守ってくださって…うっ、嬉しくて泣けてきます…」


 そう、ここで一滴、二滴と人情の涙が流れる。なんだかんだ言って、この世界は弱い者が苦しんでるんだ。ジュンはその涙を見て、目元をキュッと細める。

「泣かないでちょうだい。あたしがいる限り、この街は安全よ。オカマは人情に厚いの。あなたが笑って暮らせるようになれば、それでいいわ♡」


 颯爽とその場を立ち去るジュン。その背中を見て、路地裏の陰から様子を伺っていたレイとルイナが、顔を見合わせる。

「ちょっとレイ、ジュンさまって本当にすごいお方なのね。まるで物語に出てくる勇者みたい…」

「フフン、勇者がなんぼのもんよ。オカマ剣士はその上を行く存在よ! あたしたち、こんな素敵なヒトとお近づきになれたなんて、運がいいわぁ♡」


 こうしてジュンは、異世界初日から街の問題をバッサバッサと解決する頼れるオカマ剣士として、一気に評判になっていく。強さに裏打ちされた優しさと、垣間見える人情深さ、そして何よりもあの独特すぎるキャラが、街の人々を笑顔にし、感激させ、時には困惑させていくことだろう。


 さあ、この先ジュンはどんな騒動を巻き起こすのやら。ナレーターとしては、ちょっと過剰すぎるキャラ立ちに胃が痛い気もするが、それがこの物語のウリらしいし、読者の皆さん、もっと笑ってくださ~い!


 第二話、ここにて終幕。次回、さらなる大立ち回りに期待!


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