女神殺しの転生者による略奪ライフ〜女神から奪った魔法書で最強スキルが使い放題になったので好き勝手やらせてもらいます〜

猿山

第1話 女神殺し

 真っ暗な空間で俺はただ呆然とする。


「――ここは……どこだ……? 俺は死んだのか……?」

「そうです。あなたは死にました」


 誰に問うた訳でもないのに暗闇から返答が返ってくる。


「――誰だ……!? どこから話しかけている!?」

「私は女神です。女神ティアス」


 突如として暗闇の中に光の亀裂が走り、美しい女性が現れる。


「可哀想に、こんなに若くして死んでしまうなんて。でも、安心してください。あなたにはこれから第二の人生を歩んでいただきますので」

「――第二の人生だと?」

「そうです。あなたが生きてきた世界とは違う、まったく別の異なる世界で、ですけどね」

「どこだっていい……俺はまだ……全然生き足りない……!」

「生きる意欲があって良かった。ならば、異世界でも生きていけるだけの力を授けなければいけませんね」

「力? 力とは何だ?」


 俺の問いかけに、女神は薄く微笑んでから、手に一冊の分厚い本を出現させる。


「これは魔法書です。ありとあらゆる力が記述されており、力を求めた者に応え、それを授けてくれる本です。

 例を挙げるなら……そうですね、前の転生者の方は万物を切り裂く剣技というスキルを授かってましたかね」

「……そんな物騒な力でそいつは異世界で何をしたんだ?」

「授かったスキルを駆使して、国同士の戦争を終わらせ、英雄となり王国のお姫様と結婚していました」

「なるほど。それは確かに良い人生だな。それで俺には何が貰えるんだ?」

「この本の中から一つ、好きなスキルを選んでください」

「……選べと言われてもな……」


 俺は女神から受け取った魔法書をペラペラと捲り、目を通す。

 飲食しなくても生きていけるスキルに、荒野を森へと変えるスキル……他には……塩と砂糖を間違えないスキル? ふざけているのか?


「おい、女神様よ。どう考えても使えなさそうなスキルが書いてあるんだが?」

「ありとあらゆるスキルが書いてありますからね。一見、何の使い道もないようなスキルも多いんですよ」


 一つしかスキルが貰えないのに使えないスキルが大量にあるとはとんでもない罠だ。


「この場所に時間の概念はないので、欲しいスキルが見つかるまで、じっくり探してみてください。あ、そうそう。スキルの授かり方ですが、欲しいスキルが記述されているページを破って、そのスキルの名前を読んでください。 

 それで、そのスキルはあなたの物です。

 ちなみに二つ以上スキルを習得しても没収しますので悪しからず。

 では、私は天界に戻りますので、終わったら虚空に向かって呼んでください。すぐに戻ります」


 そう言うと女神は再び光の亀裂を出現させ、その亀裂の中へと消えていった。





 あれからどれほどの月日が経ったのだろうか。幸い死んでいるからか、食事も睡眠も必要としない。なので、昼夜問わず魔法書を眺めていられるのだが、なかなか欲しいスキルは見つからなかった。

 魔法書に終わりがあるのなら諦めもつくのだが、残念ながら、この分厚い魔法書はページをどれだけ捲ろうとも終わりがない。これは比喩ではなく物理的に終わりがないのだ。

 ありとあらゆるスキルが記述された本というのは、どうやら嘘ではないらしい。


「とはいえ、このままじゃ一生異世界に行けないな」


 やはり妥協するべきだろうか。そう思い始めた矢先、俺はとんでもないスキルが記述されたページを発見してしまう。


「――これは……神を殺す力……だと?」





「かなり長い時間お悩みになっていたようですね。あなたがいた世界の時間で一年ほどは経ったのではないでしょうか?」

「どうせ貰うなら一番良いものを選びたいからな」

「そうですか。まあでも私が呼ばれたということは、その一番良いものは見つかったのですね?」

「ああ。でもそれを教える前に一つだけ聞きたいことがある」

「何でしょうか?」

「俺が行く異世界には名前は付いてるのか?」

「そうですね……WS74201という女神間で異世界を識別ための名前ならありますけど……」

「ああ、大丈夫、それで十分だ」


 俺は女神の背後に回り込み、彼女の背中にそっと手のひらを置く。


「――え?」

「あんたに恨みはないが……俺は極悪非道のギャングを束ねる若頭だったんでね。

 自分のためなら老若男女とはず、赤子すらも殺すのさ……女神を殺すことも例外じゃない」

「――何を言って……私は女神、神なんですよ……? 殺せるわけが……」

「じゃあな女神様。お前に次があるのかは知らないが、幸運を祈るよ。『神殺し』」


 俺は魔法書から授かった神殺しのスキルを発動させる。すると女神の体は正面に向かって爆ぜた。

 人間だったら臓物が飛び散っているところだが、流石は女神、千切れた肉体は光の粒子となって霧散した。


「ククク……ハーッハッハー!!!! これでこの魔法書は俺のものだ!!!! 待ってろ異世界!! 新しい人生を謳歌してやるぞ!!」

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