第2話 なんで手に入れようとしないの?
※当時は昭和なのでリサイクルショップとかはまだ少ない時代です。
どう考えても理不尽な気がする。
だけど、泣いたと言う事は恵子ちゃんも本当は黒いランドセルが嫌だと思っているそう言う事だよね。
まずは僕の事より、恵子ちゃんの事を優先しようと思った。
僕は近所の小学校を卒業したお姉さんの家を回る事にした。
まず、最初は仲の良い三浦お姉さんの家だ。
ピンポーン。
呼び鈴を鳴らすと、三浦お姉さんのお母さんが出てきた。
「あら、貴方は、泉くんじゃない? こんな夜遅い時間にどうしたの? うちの洋子になにかようなの?」
僕は事情を話す事にした。
「実は僕のクラスに、女の子なのに黒いランドセルを使っている子がいるんです……それで三浦お姉さんがもし、ランドセルが要らないなら、貰えないかなと思って……」
「あらあら、そうなの? ちょっと待って、今洋子に聞いてみるね」
そう言うと三浦お姉さんのお母さんは奥に引っ込んだ。
暫くすると、奥から三浦お姉さんとお母さんが出て来た。
「もう使わないからあげるけど、泉くんその子の事好きなのかな?」
「あらあら、そういう事なの?」
「違います……ただ可哀そうだから……」
「本当にそうなのかな? 誰にも言わないからお姉さんに教えてよ」
「内緒……」
散々揶揄われたけど、ランドセルは貰えた。
同じ事を心当たりのあるお姉さんの家に行き繰り返した。
その結果、合計 3つの赤いランドセルが貰えた。
その足で僕は、恵子ちゃんの家に向かった。
◆◆◆
恵子ちゃんの家は通学途中だから知っていた。
ピンポーン。
呼び鈴を押した。
すぐに中から恵子ちゃんのお母さんが出て来た。
「は~い、貴方は! 恵子に謝りにきたの?」
「いえ、赤いランドセルを貰ってきました」
「これどうしたの......」
「僕の家もそんなにお金があるわけじゃないから、ランドセルも服もお古なんです......だから、このランドセルも今年卒業したお姉さんから貰ってきました」
「どう言う事なの?」
「え~と僕は恵子ちゃんを泣かせるつもりは無くて......」
僕は自分が、決して意地悪を言いたくて言ったんじゃなくて、なんで黒いランドセルを持っているのか知りたくて聞いた。
その事をしっかりと話した。
「そう言う事なの?」
「うん、だって僕は不思議で仕方なかったんだ。 なんで女の子なのに黒いランドセルを使うのかなって、もしなにかの事情で黒い方が恵子ちゃんが好きな場合もあるじゃない? でも恵子ちゃんも本当は赤いランドセルが欲しかったのが解ったから貰ってきました。 だから、使って.......あっ恵子ちゃん」
「泉くん、それ赤いランドセルじゃない......」
「新品じゃないけど、赤いランドセル、はいプレゼント」
「泉くん......」
「それじゃ、おばさん、恵子ちゃんバイバイ」
「泉くん、おばさんが悪かったわ、ごめんね」
これで良いよね。
◆◆◆
家に帰ると、お父さんもお母さんももう怒ってなかった。
恵子ちゃんのお母さんから電話があったみたいだ。
◆◆◆
あくる日、恵子ちゃんは赤いランドセル背負って学校に通ってきた。
『うん、やはり僕は間違っていないよね』
だから、僕はちょっとだけ仕返しをする事にした。
放課後を待って職員室に行った。
「松山先生......」
「どうかしたの? 泉くん」
「先生は恵子ちゃんになんで手を貸してあげなかったの?」
「なにをいっているんですか?」
「皆は可哀そうだっていうけど、なんで何もしてあげないの?」
僕はお父さんに困っている人がいたらたすけてやれ。
そう教わった。
「先生が何もしてあげないですって」
「うん、卒業生の女の子から、ランドセル貰ってあげれば良かったんじゃない? 僕でも思いつく事先生は思いつかないの?」
松山先生は何も言わなかった。
「先生、ランドセルを手に入れて恵子ちゃんにあげた僕。なにもしない癖に可愛そうだという先生や周りの友達。どっちが思いやりがあるのかな? 」
「それは......」
何時まで待っても続きの言葉が出ないから......
「先生、さようなら」
僕は職員室を後にした
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