【カクヨム10短編参加作品】大人を困らせる 泉くん『黒いランドセルの恵子ちゃん』
石のやっさん
第1話 黒いランドセルの恵子ちゃん
僕が小学校1年生の時だ。
クラスに1人だけ女の子の中に黒くてボロボロのランドセルを持つ女の子、恵子ちゃんがいた。
恵子ちゃんは黒髪の綺麗な子でいつも笑っているかわいい子だ。
子供ながら、その子の家がお金の無いのは解っていた。
服もボロボロだし、お父さんがいないのはお母さんから聞いていたから。
うちも余りお金はない方だけど、ランドセルは黒だし、服もわりと真面だった。
他の子は恵子ちゃんは可哀そう。
良くそう言っている。
子供だった僕はつい恵子ちゃんに疑問に思っていた事を聞いてしまった。
「恵子ちゃんは女の子なのに、なんでランドセルが黒いの?」
暫く考えて、恵子ちゃんは泣きそうな顔で……ぼそりと話し始めた。
「私んちは、お父さんがいなくて……うっうっ貧乏だから、赤いランドセルが買えないの……うぅぅうっうえええええーーん」
『貧乏だから赤いランドセルじゃないんだ』
そう思っていると。 恵子ちゃんが泣きだした。
泣いている恵子ちゃんの傍にいた女の子が騒ぎ出した。
「泉くん、最低……」
「泉が、恵子ちゃんを泣かせたぁぁぁーー」
「酷いよ、なんでそんな事言うの?」
皆して僕を責める。
僕は何も悪い事をしていないのに。
「僕は悪い事をしていないよ」
そう言うけど、誰も僕の話を聞いてくれない。
学級委員の渡邊さんが、担任の松山先生に言いつけたせいで僕は放課後居残りで説教を受けるはめになった。
◆◆◆
僕は、放課後残されて、松山先生に正座をさせられ怒られていた。
「恵子ちゃんの家はお金が無いからランドセルが買えないの、なんでそんな事が解らないの? 泉くんには思いやりが無いの?」
そう言われたが、僕には理解できなかった。
「僕は悪い事言ってないのになんで怒られるの?」
そういう僕の頭に松山先生はゲンコツを落とした。
「泉くんは、もう少し人を思いやる気持ちを持った方が良いですよ」
僕が反省して無いと言う事で親に電話で伝えられて、家に帰ってからもお母さんから怒られた。
最後には、恵子ちゃんが親に言いつけたせいで、恵子ちゃんのお母さんから家に電話がかかってきて、お父さんの耳に入ると、思いっきりビンタをされ、夕飯を抜かれてしまった。
『僕は本当に悪くない』
そう思っていたから、僕はそれでも謝らなかった。
今度はお母さんとお父さん二人からお説教をされ
『反省するまで帰って来ないで良い』
と言われ、家を追い出された。
僕は本当に悪くない。 なんで反省しないといけないのか解らなかった。
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