二度目の人生努力の鬼となる
ピョン太郎
第1話 プロローグ
何かに熱中できるからこそ努力できる。
私にはその何かがなかった。
見つけようともしなかった。
テストは80点ぐらい取っときゃ良いだろうとバイト、部活動はノルマ以上の事はやらない。
ゲームだってそうだ。
ストーリーを終わらせたらばすぐカセットケースにしまう。キャラのレベル上げはもちろんのこと裏のステージがあったとしてもある程度終わっているのならばそれ以上はやらない。
ある程度の達成感で私は満たされるからだ。
甲子園に出たくて毎日素振りをしているやつを知っている。そいつの手は水ぶくれと血豆、手の皮が剥けとても痛そうだった。
それを【羨ましい】と嫉妬していた私がいた。
彼は野球に熱中だ。代え難い至高の達成感と幸福感を得るために【努力】をする。
はぁ、本当に羨ましい。
私はどうしても報われる、報われないで考えてしまう。報われない理由を作ろうとしてしまう。
本当につまらない人生だ。
だから今日は、変わり映えのしない日常への細やかな抵抗を試みることにした。
一方はいつも通る信号の多い道。もう一方は学校から少し遠回りになってしまうが信号が少なく人通りの少ない住宅街道。
これは完全なる偏見だが後者は比較的インキャかせっかちな人が通るイメージがある。
現に目の前には超がつくほどのど真面目君こと【ガリ勉マイスター】の飯田が歩いている。さらに先には学級委員に選ばれたがクラスがまとまらず言うことを聞いてくれないためヒステリックを引き起こした【ヒステリック前田】もいた。あながちこの考察は間違っていないだろう。
見慣れない景色に努力家達の群れにいる私も彼らと同じ人種になれたかのような優越感に浸れた。
しかし、神様は見ていたのかもしれない。
お前は違うのだと......。
「危ない!!」
頭上から大声が響き渡り私の頭にズシリと硬く重たい何かがぶつかる。
植木鉢だ。
当たりどころが悪かったのか膝に力が入らずその場に倒れてしまった。
指先一つ動かせず吐き気と頭痛が交互に襲いくる。
あれ?呼吸ってどうやってやるんだっけ?
もしかして、死ぬのか?
一生懸命呼吸をする【努力】をした。
一生懸命手足を動かそうと【努力】をした。
しかし、何一つ叶わなかった。
死を自覚した時、山田太郎の中で何かが吹っ切れた。
どうせ死ぬのなら死ぬ気で何か努力をすれば良かったなと、つまらない人生で終わりたくはないとこの時初めて自身に強い【向上心】が芽生えた。
もし、二度目の人生があるのならば私は努力の鬼となろう。
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