(いつからか、いつの間にか)

進路決定。


意図せず、高校も同じになった。



幼稚園、小学校、中学校、そして高校までも同じ。

幼馴染の中でもここまで一緒になったのは奈美だけだ。



改めて運命というものを意識する。

少し輪郭を垣間見たかのような、小指を凝視したくなるような。


だけど想うだけで切なくなってしまうから、結局は考えないようにしていた。




高校生活1日目の朝、駅に向かう途中で自転車を漕ぐ奈美の後姿を見つける。


”おはよう”


それだけ言おうと思って奈美の隣に自転車を進めた。



『……。』



何も言えなかった。



僕は結局何も言えずに、ただただ奈美を追い越して奈美に背中を見せるだけだった。



何も言えなくなっていた。



いつからこんなに距離を感じるようになった?



挨拶一つに躊躇するなんて、臆病者め。



情けない自分に嫌気がさす。



なのに一方では、何事もなかったことにほっとする自分もいる。



僕は何がしたい?



僕はどこへ向かおうとしている?



いだ水面だけ見ていたいのか?



明日さえ怖いのか?




いつからか、いつの間にか、僕は奈美との間に境界線を引いていた。

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