第7章: 裏切りと陰謀

古代文明の研究プロジェクトが本格的に始動して一ヶ月が経過した頃、

不穏な空気が王都を包み始めていた。


研究施設で作業を進めていたはるかは、

データの一部が何者かによって外部に流出していることに気付く。

セキュリティシステムには痕跡が残っておらず、内部犯の仕業と思われた。


「誰かが私たちの研究内容を漏洩している...」


はるかは慎重に調査を進めた。

そして、ある日の深夜、彼女は衝撃的な場面を目撃する。


研究施設の地下室で、レインが何者かと密談を交わしていたのだ。


「計画通り進めている。彼女は何も気付いていない。」


レインの声が、闇の中から聞こえてきた。

はるかは息を殺し、会話に耳を傾ける。


「よくやった、シルバーブレイド。魔王様もお喜びのはずだ。」


はるかの心が凍る。

最も信頼していた仲間、レインが魔王軍のスパイだったのだ。


翌朝、はるかは通常通り研究を続けるふりをした。

しかし、彼女の心は激しく揺れていた。なぜレインは裏切ったのか。

どうして自分は気付けなかったのか。


「はるか、今日も頑張ろうな。」

いつもと変わらないレインの笑顔に、はるかは苦しい思いを抱えながら頷いた。


しかし、事態は急速に動き始める。

その夜、研究施設が魔王軍の奇襲を受けたのだ。


「はるか!施設が襲撃を受けている!」

レインが研究室に駆け込んできた時、はるかは既に準備を整えていた。


「分かっているわ、レイン。あなたが漏らした情報のおかげでね。」


レインの表情が一変する。「気付いていたのか...」


「ええ。でも、まだ理由を聞かせてもらってないわ。」


レインは苦い表情を浮かべる。

「魔王様には、私の命の恩があるんだ。そして...この世界の真実を知っている。」


施設内に爆発音が響く。

魔王軍が侵入を始めたのだ。


「さあ、はるか。おとなしく来てもらおう。」


レインが剣を抜く。

しかし、はるかは冷静に対応する。


「残念だけど、その前に一つ言わせて。」

はるかが指を鳴らすと、研究室中の魔法装置が起動した。


「私も昨日から準備をしていたの。」


彼女が開発した防衛システムが起動し、研究室全体を包み込む。

レインは一瞬の隙を見せ、はるかはその瞬間を逃さなかった。


「プログラム・バインド!」


魔法の光がレインを拘束する。

同時に、はるかの信頼する衛兵たちが研究室に突入してきた。


「レイン・シルバーブレイド、あなたを反逆罪で逮捕します。」


レインは苦笑いを浮かべた。

「やられたな...だが、これで全てが終わったわけじゃない。」


彼の言葉通り、これは始まりに過ぎなかった。

魔王軍の本格的な侵攻は、まだ先にあったのだ。


はるかは研究データを守りつつ、残された仲間たちと共に地下通路を通って脱出する。彼女の心は重かったが、前を向くしかなかった。


「私たちには、まだやるべきことがある。」


信頼できる仲間たちと共に、はるかは一時的に王都を離れることを決意する。

そして、魔王の真の目的を阻止するため、新たな戦略を練り始めるのだった。


レインの裏切りは、はるかに大きな教訓を残した。

しかし、それは同時に彼女を更に強くする契機となった。

真の仲間との絆を確認し、より強固な信頼関係を築いていく。


暗闇の中、はるかは決意を新たにする。

これは終わりではない。新たな戦いの始まりなのだ。

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