36話 運命の席替え
翌日。昨日、学校を無理やり抜け出した私は、内心バレてないかヒヤヒヤしながらも何食わぬ顔で登校し、着席した。
「よっす」
早速、黒崎くんが話しかけてきた。おそらく、昨日の件が気になったのだろう。
「よっす」
「仲直りした?」
「うん」
「じゃあ、なんでそんな複雑な顔してんだよ」
私は昨日のことを説明した。何食わぬ顔のつもりだったんだが。
「ああ、それなら大丈夫。うちの学校、良くも悪くも警備がザルだから」
「ならよかったあ」
一安心である。にしても、物騒な世の中だ。対策はしっかりしてほしいものである。
黒崎くんと雑談をしていると、ホームルームのチャイムがなる前に、副担任である山野先生が教室に入ってきた。うちの学校では週1回副担任がホームルームを担当するという定型がある。
「着席してくださーい」
先生が呼びかけると、急いで生徒は着席した。
事務連絡等を終え、今日も一日頑張るよう伝えられると思ってた私たちに、先生は予想を裏切る一言を言い放った。
「じゃあ、席替えしよっか!」
クラスは状況を飲み込むために一瞬の沈黙を要したが、次の瞬間、革命並に騒いだ。比較的、落ち着いてると言える私、黒崎くん、真央ちゃんはぼーっとその光景を見ていた。
「とうとう席替えか」
「ね。割と悲しいかも」
「でもでも、また近くになる可能性もあるよ!」
我々は互いの友情を再認識し、席替えに挑んだ。
毎回恒例、くじ引きの時間だ。私の狙いは窓際の1番後ろの席、いわゆる主人公席だ。
私はくじを引いたが、中身をもったいぶって見ずに、席についた。先ほど黒崎くんと真央ちゃんと同時に確認しようと約束したからだ。
「よし、三人引いたな」
「うん。じゃあ、見るか」
「せーの!」
一斉に確認する。見事なまでに三人散らばった。そして、私は真ん中の1番前になった。不本意ながら先生と仲良くなれそうだ。
「友よ。新たな出会いに期待しようじゃないか」
「そうだね。寂しいけど」
「席が離れたからって心の距離は離れないからね!」
比較的ポジティブ思考の我々らしいミニミニ送別会が一瞬にして開かれ、一瞬にして終わった。
そいえば、ホラー部員はどうなんだろう。私は黒板に書かれた新たな座席名簿を見た。こちらも見事なまでにほとんどが散らばっていたが、辻に関しては斜め後ろだった。よし、わかんないところがあったら、質問し放題だ。
「じゃあ、各々移動してー」
先生が呼びかけると、それぞれが荷物を持って、新たな席に向かっていった。足取りが軽い者もいれば、ショックで千鳥足になりながら向かう者もいた。
隣の席が誰なのか確認し忘れていた。向かう途中、私は黒板を見た。「須賀」と書かれていた。…今回はあまり良い席とは言えないかもしれない。須賀は元々黒崎くんも所属するサッカー部にいたが、今は帰宅部エンジョイ勢だ。素行は、あまり良くない。かつて、サッカー部員を殴り、退部+停学を言い渡された男だ。校則も違反しまくり。良くない噂だってある。いわゆる、不良ってやつだ。私は今後の学生生活に不安を募らせた。多分、私のことなんて眼中にすらないし、授業以外で関わらなきゃいいだけの話だ。うんうん。落ち着け。自分。きっと、大丈夫なはず。そうだよね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます