7話 勃発
もっくんと私たちは真央ちゃんに考えを改めてもらうべく、そのためのアイデアを出し合っていた。通ったのは南のアイデアだった。それは、もっくんが毎日真央ちゃんの家に行くことだった。情熱を伝えるには直接会うに越したことはないという理由だった。もっくんは1人で行くことを少し心細そうにしていた。しかし、南は放送委員会の集まり、米屋は家の手伝い、私は今週放課後の掃除係であった。そのため、私たちが行くのは難しいのではないかと思われたが、結局、明日の放課後に私ともっくんで真央ちゃんの家に出向くことになった。掃除はさほど時間がかからないことから、私が行こうかと提案すると、もっくんは是非と言って喜んでくれた。そして、真央ちゃんにはこの件を連絡しておくと伝えられた。よって、私は掃除を終えた後に、もっくんと待ち合わせ、家に行くことになった。
真央ちゃんが来ないと、私にも困ることはあった。そう。ペアワークである。基本、隣の席の人とそれは行うため、隣が欠席の場合、同じく隣がいない人同士で組まされる。そこで、私がペアワークを組むのは、大抵米屋であった。米屋の隣はほぼいつも空席である。その席に座る人物は「辻」というのだが、何せ学校に来ないため、どんな人かは全く知らない。
私は先生に米屋とペアを組むよう言われ、席移動をし、ペアワークをしていた。ほぼ私語だったけど。
「米屋の隣って「辻」って人だよね。どんな人なの?」
「学年1位らしいぞ」
「学年1位!?」
「うん。最低限の出席日数だけ稼いで、あとは部活活動日の放課後に来るらしい」
「へー。部活は行くんだ。何の部活?」
「さあ。そこまではわからん」
「そっか」
どんな部活なんだろ。もっくんみたいなエースではないってことだよな。だったら、生徒集会とかで表彰されるだろうし。
「そういえば」
「何?」
米屋は私に聞いた。
「今回のもっくんの件、君ノリノリだよね。私の作戦の時はそんなやる気なさそうだったのに」
米屋は明らかに動揺していた。図星かよ。
「もっくんのために何かやってあげたいって思っただけだよ」
「声がうわずってるよ」
勿論、あんなに号泣してたくらいだから、嘘ではないんだろうけどさ。私の作戦にも、同じ力の入り具合とまでは行かなくても、それなりに応援、手を尽くしてくれたっていいだろう。
米屋は大変ばつが悪そうにしていた。
「まあいいけどさ」
私は米屋にこれ以上言うのはやめて、授業で配られたワークシートの空欄になっている部分を埋めるために書くことを始めた。米屋はまだ呆然としていた。このプリント授業後提出だけど大丈夫か。
米屋は私がプリントを記入している姿を見ながら、私に聞こえない声でボソッと呟いた。
「彼氏ができたら嫉妬するからに決まってるじゃん」
放課後になり、私は掃除を終えた。想定より早く終わったため、もっくんとの約束の時間まで少し時間があった。そのため、私は教室で1人のんびりと帰り支度しながら、約束の時を待とうとしていた。すると、教室のドアが突然開いた。誰だろうと思い、そこを見ると、私のクラスメイトではない女子のトリオがいた。1人はベリーショート、もう1人はポニーテール、残りの1人はボブだった。3人揃って身長が高く、威圧感があった。しかし、それは身長の影響だけではなく、態度の問題であったことがすぐにわかった。トリオはずかずかとこちらに近寄ってきて、ボブの方が私に声をかけてきた。
「あんたが真央?」
私は一瞬肩を透かそうとしたが、とあることを思い出した。米屋が放課後に話していた話。女マネージャー。もっくんと揉めていた。元カップル。脳内にそれらのワードが駆け巡ると、私はこの事態の真相が明らかになるのではないかと予感がした。
「はい。そうです」
私が意を決して答えると、トリオはニヤニヤしていた。ニヤニヤするな。何も面白いことしてないだろ。
「ちょっと付いて来てよ」
またもやボブが言う。
「でも、あの、人を待たせてるので」
「大丈夫。すぐ終わるから」
ほんまか?長引きそうな気しかしないんだけど。
「じゃあ、付いて来て」
ボブが言うと、残りの2人は私の後ろに来た。トリオはまるで私を取り囲むような立ち位置についた。ボブが先陣を切ってる様子から、トリオの中でボブがリーダー格のように見えた。
仕方なしに私はついて行くことにした。長引きそうなら途中で切り上げて、逃げるようにもっくんのところに向かえばいい。うん。そうしよう。
「ちょっと!!!誰か!!!!」
密室に閉じ込められた私は今年1声を張り上げて、助けを呼んでいた。何でこんなことに!?
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