私が出会った者とは…?

夜月月華

私が出会った者とは…?

私の一日は目覚まし時計の音から始まる。

6時30、起床して、朝食を食べて、歯を磨いて、顔を洗って、荷物を持って学校へ行く。

一日何の変化もない生活をする。授業を受けて、友達と話して、昼食を食べてまた授業を受けて帰る。


休日はお菓子を作ったり、溜まったアニメを消化したり、課題をやったり、昼寝をしたりしてダラダラ過ごす。


私は友達付き合いがよくないので、学校で友達はできても遊びに行ったりすることはない。誘われないし。


そんな感じで現在短大一年生。


毎日代わり映えにない人生だ。私はこんな感じで何もなしえないで人生が終わっていくのだろうかと悲しくなりそうなそんな平凡な日々。


ある時、道を歩いていたらトラックに衝突された。突然の出来事で何が何だかわからないまま私は意識を手放した。



次に目覚めたのは一面が花畑の場所だった。天国かと思った。


「お前さんなぜここに来たんじゃ?」


突然声をかけられてびくっとしてしまった。振り返るとそこには白髪の長い髪の毛と白い長いひげを撫でながら不思議そうな顔をしたおじいさんがそこに立っていた。


「ここはどこですか?」


私の口から出たのはこんな言葉だった。意外と冷静だったと後から思う。


「ここは時空と時空の狭間じゃ。お前さんはいわば精神体とでもいうのかの?そんな感じじゃ。お前さんなぜここへ来た?」


「わからないんです。確かトラックに轢かれて…それで…」


私は言葉にしただけで全身が凍り付くような感覚に襲われた。

「よいよい。無理に思い出さなくても。そうか…お主、相当強い迷いがあってここへ辿り着いたんじゃな。トラックに轢かれたと言っておったが、まだお主は生きておる。まぁ大けがはしているとは思うが…とにかく生きてはおるから安心せい」


死んでない?ここは天国ではないということ?


「そうじゃ。ここは天国ではないぞ」


私はそれを聞いてホッと安心した、が同時に不安と悲しみを抱いた。


「どうしたんじゃ?」


おじいさんは聞いてきた。


「…私は死んだ方がましだったかもしれない。こんなこと言ってはいけない、思ってはいけないとわかっているけど…そう思わずにはいられない。だって、私は今まで何もしてこなかった。自分のやりたいということもないし、やろうと思えることもない。目標がないままこの19年間過ごしてきた。そんな私に生きている価値はあるのかな…って考えちゃって…あれ?私なんでこんなこと話してるんだっけ?もうわからないよ…」


私はおじいさんの顔が見れなかった。本当に私は何のために生まれてきたんだろうか?

そう思って俯いていると顔を優しい何かが包み込んだ。

なんだと思って顔をあげるとおじいさんが私の両頬に両手を当てて顔を見つめてきた。

おじいさんは怒っているでもなく悲しんでいるでもなく、ただ


——優しく微笑んでいた。


「お嬢さん。人はね何かを成しえるために生まれてきたのではないのじゃよ」


おじいさんは私を優しく見つめてそう言った。


「最初、神は人間という入れ物を造って自分の魂のかけらをそこに入れて遊んでいたのじゃよ。それをたくさんの神がしていて、いつしか恋に落ちて結婚して子供を産んでいった。そして今、最初の人間という神の器は限られた時間の中で地上という神界とは違う環境を堪能して死んでいったのじゃ。今、地球にいる人類はそんな気まぐれな神達から始まって時間をかけて血が薄れていった子孫じゃ。神というのは気まぐれでね、そんな自分たちの子孫が今、どんな文化を歩んでいるかを見守っているんじゃよ。ただね、神は一人ひとりの人間を見ている余裕はないから全体を見ているんじゃ。神には人間の人生に関与してはいけないという固い掟がある。それはね、神が干渉しすぎるとその人間に神格が宿ってしまい地上では生活できなくなってしまうからなんじゃよ。しかし、それは善良な人間だったらの話じゃ。悪事を働きすぎた人間に神が干渉するとその人間は歪んでしまい壊れてしまうんじゃよ。そしてその人間は死んで悪霊になってしまう。そして生きている人間に干渉して悪事に手を染めるように誘導するんじゃ。だから神は人間に干渉できない、してはいけないんじゃ。

何が言いたいのかというとだね…おや?ワシは何を言いたかったんだったかな?年を取ると物忘れが激しくていけないね…お嬢さん、ワシは何を話していたんだったかな?」


「え、え~と…あ、人は何かを成しえるために生まれてきたわけではない…だったかな?」


「そうそうそれじゃ。何を言いたいのかというと、神は見ているが見ていないということじゃ。神は死後の裁判を楽しみにしておるのじゃよ。その人が自分で何を考えて行動して何をつかみ取ったか…そんな人生を見るのが好きなんじゃ。それは誰かに強要されて送った人生ではなく自分でつかみ取った人生ではないとつまらないんじゃ。だからのお嬢さん。人は何かを成しえるために生まれてきたのではなく何かをつかみ取るために生まれてきたんじゃよ。まぁ言ってみれば神の道楽の延長線上じゃ。だが勘違いしてはいけないよ。人間は神の掌の上で転がされているわけではい。神は死後の裁判でその人の人生がどんなものだったのか、ただそれだけを見たいがために輪廻転生する魂の補助をしているのじゃ。そして、少しばかりの加護を与える。そのかごは神がその子供に良い人生を送ってもらいたいという最初で最後の手助けじゃ。人生は辛い目にあってもそこから這い上がる努力をしたら自然と幸福に近づける、しかし、努力をしなければ何も変わらない。ようは努力次第ということじゃな。

まぁお嬢さんはつまらない人生と思っているかもしれないが…そんなときはこの言葉を思い出すといいぞ。『生きていれば何かしらの変化は必ずどこかである。だからなんとなくでもいい、ただ何気ない人生を送っているだけでそれは『幸せ』ということ』何気ない幸せを大切にするんじゃよ」


おじいさんはそれだけ話すと満足したように頷いた。

すると次第に私の視界はぼやけていく。おじいさんが手を振っているような気がする。

私にはなんとなく目覚めの時だということがわかった。



目が覚めるとそこは病室のベッドの上だった。体を起こそうとするも全身が激痛に見舞われた。

ベッドのそばにはやつれた母がいた。私が目覚めるのを待ってずっとそばにいてくれたらしい。

私は一週間くらい眠っていたようだ。

母はすぐに父に連絡していた。

父はすっ飛んできた。そして涙を流して泣いた。あの強面で堅物な父が泣いたのだ。初めて見た…と驚きながらしかし、心配してくれる人がいることに心が温かくなり、私も泣いてしまった。あの時の怖さと今の嬉しさと心配をかけてしまった心苦しさで涙が出た。


私はこの時心配してくれる人が入りことが幸せなのだと初めて実感した。


あのおじいさんが出てきた夢はなんとなくでしか覚えていないがおじいさんが言っていたあの言葉は覚えている


「『生きていれば何かしらの変化は必ずどこかである。だからなんとなくでもいい、ただ何気ない人生を送っているだけでそれは『幸せ』ということ』何気ない幸せを大切にするんじゃよ」


そうだよね生きていれば何とかなる。生きてさえいれさえすれば幸せは訪れる。何気ない日々も『幸せ』だということが今ならわかる。



夢の話を母と父にしたら、「もしかしたら悩んでいるお前に神様が応援してくれたのかもしれないね」と言われた。


そうだね。もし、あのおじいさんが神様なら、私はおじいさんに感謝しなければ。もう顔も思い出せないけど、あの時の優しい雰囲気と温かい手のぬくもりは一生忘れないと思う。



だが一つおじいさんの話で疑問に思ったことがある。それは、母と父は神様だと言ったが、神様は人間に干渉できないとおじいさんは言っていたと思う。


では、あのおじいさんは神様だったのかはたまた別の何かだったのか…今の私にはわからない。


いつかわかる日が、会える日が来るのなら私はおじいさんに言いたいことが一つある。

ただ一言「ありがとう」と。





皆さんは神様を信じますか?

私が出会ったおじいさんはなんだったのか…

貴方ならどう考えますか?

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私が出会った者とは…? 夜月月華 @yeyueyuehua

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