貴方と歩く雪景色の道――母から娘へ
紅夜チャンプル
思い出す純白の道
この季節、雪がちらつき始めると思い出す。
白くて繊細な模様をした樹木が並ぶ、どこまでも続く純白の道。
見上げると雪がゆっくりと舞い降りてくる。雪の一粒一粒がふんわりと2人を優しく包み込むよう。
寒いはずなのに2人並んで歩けば、温もりすら感じる。
歴史が好きな事や、都会の喧騒から離れて落ち着いた場所で過ごしたいといった共通点があり、出逢ってすぐに意気投合した。
今日は雪も降っていたが、この神社の参道に並ぶ樹木の輝くような白さに……2人は心打たれる。
「ねぇ和晶、雪が降るとこんなに綺麗な道になるのね……」
「そうだな、今日みたいな日に来るのは初めてだ」
雪がちらちらと舞い降りる、というよりふわふわと舞っているのもロマンチックだな……なんて感じる美雪である。
2人で参拝して境内を歩きながら、あちこちにある冬景色を見る。冬って寒いイメージしかなかったのに……2人で見る、透き通るような白い景色はただただ美しくて、身も心も温かくなっていく。
神社を出て和晶が予約していたレストランへ向かった。
少し離れたところにあるビルの8階にある静かなレストラン。窓からはイルミネーションの街並みが見える。
空には点々とした白い雪。今日は一日中降るのだろうか。
食事を済ませた後に和晶が小さな箱を取り出す。
「結婚しよう、美雪」
雪の降る夜景の中、2人は幸せで一杯だった。
※※※
あれから30年。
今でもこの季節に雪がちらつき始めると思い出す。
あの頃2人で歩いた純白の参道を。あの日にプロポーズされて、感動を味わったことを。
「お母さん」
美雪と和晶の娘、
「明日……あの神社に行ってくる。
「そう、気をつけてね。あの神社か……」
そう、自分達も歩いた樹木が続く参道のある神社。静かで、お互いの足音しか聞こえない。
この雪である。明日も降り続ければきっと……白い樹木を見ながら2人寄り添って歩くのだろう。
「お父さんにはうまく言っといてよ」と凛が母親にお願いする。
「わかってるわ」
社会人3年目の凛と純、2人もまた落ち着いた神社や寺によくデートをしているらしい。まるで……若い頃の自分みたいだと美雪は思う。
あの子達もきっと、あの神社の参道の雪景色……雪で彩られた樹木が続いていく景色を見て感動してくれるだろう。だって私も和晶も、あの純白の景色は……30年経った今でも覚えているのだから。
翌日、
「行ってらっしゃい」と美雪が凛を見送った。
「凛は出かけたのか?」と和晶が言う。
「ええ、お友達と約束しているって」
「雪‥‥降っているな」
「そうね……あなたは、あの時のことをまだ覚えている?」
「フフ……毎年聞いてくるんだな」
「あ、そうだったかしら」
「覚えてるよ。あの日に言おうと思って、指輪持ってずっと緊張していたんだから」
「緊張していたわね、あなたが珍しく」
「そりゃあ……男は皆、緊張するものさ。だけどあの時……雪が降る中で歩いた白い道は、雰囲気が良かったな。それに助けられたのかも」
「そうなのね……私も雪って特別な感じがするわ」
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