第4話 「レオ先生の特別授業」
「魔法とは、世界の理を理解することから始まる」
レオ先生の声が、静かな教室に響く。
窓から差し込む光が、彼の姿を一層凛々しく見せていた。騎士団の制服に身を包んだ姿は、まるで物語から抜け出してきたような雰囲気を醸し出している。
「綾瀬さんの魔法は、その最たる例だ」
突然の指名に、私は少し身を縮める。
「数式という形で世界の理を捉え、それを魔法として具現化する。実に興味深い」
「はい…その、数学が得意だっただけで」
「いいえ」レオ先生は微笑んだ。「それこそが本質を捉える目なのです」
教室の中央に、彼が魔法陣を展開する。純白の光が渦を巻き、やがて一頭の白馬の幻影となって現れた。
「見えますか?この魔法の構造が」
私は目を凝らした。白馬の姿の中に、何かの法則が見え隠れしている。
「これは…調和数列?」
「正解です」レオ先生の目が輝いた。「生命の形には、必ず数学的な美しさが宿っている」
その言葉に、セシリアが身を乗り出した。
「先生、それは古代魔法の基本原理と同じでは?」
「よく知っていましたね、セシリアさん」
レオ先生は白馬を消し、新たな魔法陣を描き始める。
「古代の魔法使いたちは、世界の全てを数式で理解しようとした。その知恵の大半は失われましたが…」
彼は意味深な表情で私を見た。
「もしかすると、綾瀬さんの魔法は、その失われた叡智の一端を現代に伝えるものかもしれない」
その瞬間、教室の空気が変わった。全員の視線が、私に集中する。
ルークが静かに言った。「だから僕は、あなたの魔法に興味を持った」
「古代魔法の再現…」セシリアの声には、これまでにない真剣さが滲んでいた。
レオ先生が話を続ける。「しかし、知識には常に責任が伴う。古代魔法が失われた理由も、それを知る者の使い方次第だったのです」
窓の外で、鐘の音が鳴り響く。
「今日の授業はここまで」レオ先生は穏やかに告げた。「綾瀬さん、放課後少しお時間をいただけますか?」
「はい」
教室を出る際、セシリアが私の横を通り過ぎざま、小さく呟いた。
「あなたの魔法、もっと見せてもらうわ」
その言葉には、先ほどの敵意は感じられなかった。代わりに、純粋な探究心のような何かが滲んでいた。
ルークは最後まで教室に残り、何やら古い書物を読み耽っている。彼の周りには、見たことのない文字で書かれた本が積み上げられていた。
「魔法の原理について、新しい発見があるかもしれない」
彼の目は生き生きと輝いていた。
この特別クラスで、私は何を学び、何を見つけることになるのだろう。レオ先生の言う「古代魔法の叡智」とは、一体何なのか。
放課後の約束を前に、私の心は期待と不安で満ちていた。
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