第4話 復讐開始

部屋に戻ると、書類が山積みになっていた。

中には数日前からおいてあったらしきものがあり、もしかして日記帳の中にいた元、魔王は書類に目を通すのを少しサボっていたのでは?と思った。

今日中の書類が本当にたくさんあった。

中には、私が元々悪役令嬢として住んでいた国__リーファ帝国に関する書類もあった。その内容は、魔王の支配する国__魔国とリーファ帝国の貿易内容についてのリーファ帝国側の案を書いたものだった。

『例えば、魔国はリーファ帝国に東米100000リフィスを渡した場合、リーファ帝国は魔鉱石110個と交換する。』

途中の分にそう、書いてあった。

どういうことだろうか?

リフィス、というのは重さの単位で、一リフィス=一トンである。

魔鉱石は高いけれど、東米だってかなり高いものなのだ。

東米500グラムと1リフィスの魔鉱石一個と交換されることだってあるくらいに。

それなのに、そのリーファ帝国側の案を書いたものには、どう考えてもリーファ帝国側にしか利がないような内容になっていた。

こんな内容言語道断である。

逆にどうしてこの案が通ると思ったのだろうか。

頭は大丈夫そうですか?と聞きたくなる。

まあ、あのヒロインと攻略対象達ならこんな変なことを考えても相手がその案を通すと信じて疑ってなさそうだが___。

うーん、しかしどうしたものか。

魔鉱石なら、リーファ帝国以外の国でも取れるし、なんならリーファ帝国の隣の国、シファス王国のほうがたくさん魔鉱石が取れることで有名である。しかし、東米は魔国でしか取れないので、リーファ帝国は魔国と取引ができないとかなり困るだろう。

私は、ヒロインや攻略対象達のことが嫌いだし、リーファ帝国とは今後一切取引しない、という形で少し恨みを晴らそうか。

もちろんそれくらいじゃ私の恨み全ては晴らしきれないけど。

最終的には魔国とリーファ帝国を戦争に追いやってその時にどさくさに紛れてヒロインと攻略対象達を殺そうと思っているけど。

そう思い、私はその要望をかく乱の所に、『貿易はもうやめましょう』という内容のものを書いた。

そして、それがきっかけでリーファ帝国と魔国は対立し始めたのであった。

―――――――

「魔王様、リーファ帝国の使者を名乗るものが今来ましたがお会いになりますか?」

ラフィスが私にそう伝えてくれた。

やっと来たか。

待ちに待っていた。

私の書いたあの貿易をやめよう、という言葉に対しての文句でも言いに来たのだろうか。ふふっ、楽しみだ。どう言い返して、追い返してやろうか。

そう思っていると、私はその使者とやらがいる部屋に案内された。

その部屋には、攻略対象__リーファ帝国の第一王子、ルズがいた。私に、何度も濡れ衣を着せて殺した男だ。恨みと憎しみの感情が腹の底から勢いよくわいてくるが、今はその感情を相手に見せてはいけない。私はその感情を心の奥底にしまって、厳重にカギをかけた。そして、笑顔で

「リーファ帝国の使者と伺いましたが、何の用ですか?」

と、言った。

「何の用だと!?ふざけるな!あの貿易の書類の話に決まっているだろうが!!」

おお!けんか腰で話してきた!

これでリーファ帝国と魔国が仲が悪くなったとしても、第一王子がこうやってけんか腰で話しかけてきたからって言い訳できるじゃん。

そういえばこいつ、キレやすいんだよね。その性格だけは褒めてあげなくもないな。

私は笑顔で、

「そうですか。あの書類に何か、意見がおありでしょうか?」

と、白々しく言ってみた。

「意見も何もあるかっ!なぜ魔国と我がリーファ帝国との貿易をやめると書いたのだ!?そんなことがあって許されるか!?」

許される?

誰に許される必要があるのだ?

誰にもそんな権利はないだろう。

「それは我が魔国に圧倒的に不利な内容でしたから、断ったまでですが?」

「どこがだ!?我、わがつまが考えてくれた圧倒的に平等な内容だろう!?」

どうやら不平等だということすらもわからないらしい。

しかも、ヒロインが考えた案のようだ。

本当に、頭大丈夫ですか?と聞きたくなるが、そこをぐっとこらえて私は、どこが不平等なのか、不平等だと思ったことをすべて伝えた。

「ぐっ。」

ルズは何も言い返せないようだった。

とてもいい気味である。

内心、大笑いしてしまったのは誰も知らない。

「では、条件を変えればいいではないか!」

「いいえ、私はあなた達は信用に値しない、と思いましたので貿易はやめさせていただきます。」

私は貴族らしい遠回しな言い方では、このルズ《バカ》相手には伝わらないと思ったので、直接の言い方でそう言った。すると、ルズは頭を怒りで真っ赤にし、(ふふっ、ゆでだこのような顔色だった。)

「そうですか!それならそれで結構です。私もあなた達魔国を信用に値しないと判断したので。所詮は魔物だ。」

ルズはそう言った。

こいつは本当にバカなのだろうか?

魔国でそんなこと言ったら殺されても文句は言えない。

実際、私の背後に控えているラフィスが武器として腰につけている刀に手をかけている。そして、こちらに切ってもいいですか?と目線で問いかけている。だめだっ!と口パクで私が伝えると、とてもとても残念そうな顔で刀にかけていた手を離した。

ふー、危ない。

ラフィスが切りつける前に私に尋ねてくれてよかった。私に聞かずに、急にルズに切りかかっていたら大騒ぎになっていただろう。

私も、ルズを殺したい気持ちはあるのだが、それは今は我慢しなければならない。戦争になれば、すぐにどさくさに紛れて殺せるから。いや、殺すだけじゃ足りない。99回の死を私にプレゼントしてくれたように私も、ルズを殺すだけではなく、もっともっと苦しませて、その腹立つ面を苦痛に顔をゆがませてから殺してやらねば。ふふっ。ははっ。楽しみだなー!

「そうですか。ではお帰りください。」

私は丁寧な口調でそう言った。

「ああ、そうさせてもらおう。今後魔国とリーファ帝国の取引は一切なしだ。」

よっしゃー!

言質とったぞ!!

この後、リーファ帝国の財政はもちろんすごく不安定になることを私は知っていた。それが、リーファ帝国の隣の国シファス王国との戦争によるものだということも。

つまり、今後魔国と一切取引をしないということは、リーファ帝国にとって経済が不安定になるのに拍車をかけるだけである。あはっ、ざまぁすぎる。

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