第4話
私が前の席だから、日菜子と話をしていると必然教室の後ろを見ることになるわけで……。
そんな私の視界にはこちらに近付いてくる、日菜子の幼なじみとそのお友達なサッカー部の部長さんが目に入る。
私は、その行動に少し驚きつつ日菜子に告げる。
「日菜子、二人がこっちに来る!」
そんな私の声に、顔を上げて日菜子も驚いているうちにあの二人は私達の席の横に来る。
「日菜子、久しぶりに同じクラスだな。今年一年よろしく」
日菜子に声を掛けてきたのは、あの面倒そうな顔をしていた幼なじみの彼。
今は、落ち着いたのか少し穏やかな顔をしてる。
幼なじみだから気心知れてるものね。
そんな風に観察していると、彼の横にいたサッカー部の部長さんに声を掛けられる。
「汐月さんは、初めましてだよね!俺は水木蒼!こっちは松島要。瀬名さんと要とは一年の時に同じクラスだったんだ、よろしくね!」
ウインクと共に投げかけられた言葉は、元気がいい。
しかし、ウインクが様になるとは……。
リアルイケメンって凄いな!と驚きを心の内に留めつつ返事をした。
「初めまして、汐月有紗です。日菜子とは去年から同じクラスで仲良くなったの。こちらこそ、よろしくね」
結局思わず笑ってしまいつつ答えると、松島くんが顔を顰めながら水木くんにひと声掛けた。
「お前、ウインクしながらは無いだろ?チャラい、チャラいぞ……」
溜息をつきつつ、額に手を当てて呆れ顔で言う松島くん。
「本当に、水木くんはキレイ系に目がないのね?有紗は渡さないわよ?」
松島くんと同じ呆れを含むテンションで言葉を連ねる日菜子。
幼なじみの二人が息の合うテンポで会話している。
「えぇ!?いや、俺そんなつもりないからね?!汐月さん!」
それを受けて、私に誤解されるとまずいのか。
水木くんの弁解には必死さが溢れてて、更に私の笑いのツボをついた。
「ふは!大丈夫、分かってるから!」
この教室に入ってきた時から、水木くんの視線の先は日菜子だった。
日菜子との会話中、視界の端にいた彼を観察していたのだ。
彼は分かりやすい程に分かりやすい。
日菜子と同じ素直なタイプだとその様子を見ていて感じた。
「汐月さん。蒼も日菜子も騒がしいけど、よろしく」
そう締めくくるように言ってくれた松島くんは、私が初めて見る柔らかく優しい顔をしていた。
「うん。今年一年よろしく」
私が笑顔で返せば、三人もニコッと笑ってくれた。
この新たな出会いが、私にとってかけがえのないものになる。
そんな予感を胸に秘めつつ……
開けられた教室の窓からヒラリ、一枚花びらが舞い込んできた。
私にとっては、カウントダウンでもある一年が始まった。
不思議とこの時、私はいつも感じる不安な気持ちにはならなかったのだった。
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