アンドロイドドクター守谷はるか

Hugo Kirara3500

あなたの街のアンドロイドエンジニアです


 ゆあアンドロイドクリニック院長の守谷はるかです。看護師の野田あやめさんと一緒に仕事をしています。彼女は助手と患者さんの定期的な人格データバックアップのほか私にはできない緊急を要する時のはんだごてを使っての基板上のチップやキャパシタの張替えをやってもらっています。


 私の主な仕事は診断ソフトを使ったり、UEFIのセットアップ確認、分解しての目視と、テスターを使った回路診断が大体八割で、あとの二割がドライバーを使った部品の取り付けです。あやめさんはもともとはうちに腕パーツの交換に来た患者さんでした。彼女は手が器用だったのでうちに働きに来てもらって今まで外注していた精密作業を任せています。


 患者さんが飛行機に乗られるときのバッテリー撤去と一時預かりもしています。大体一人あたり百五十万ミリアンペア時くらいのバッテリーを積んでいらっしゃるのですがそれを五十万ミリアンペア時くらいまで落として目的地の空港に着いたらそこで借りるそうです。ボーディングブリッジから出て入国審査を通過して空港ターミナル内のバッテリーレンタルショップまで持てば良く、乗っている間はコンセントにほぼ繋ぎっぱなしになりますがスリープモードで過ごせるのであまり問題にならないそうです。ただ面倒な上に緊急時でも乗務員にモード解除操作してもらうまで自力では動けないので海外に出る時は旅客船を使う方も少なくありません。


 お子さんの身体は成長を再現するため、定期的に胴体を交換するのでほとんどの場合、リース品になっています。そのため診療や分解修理にはメーカーの講習会参加が必要になっていて待合室に修了証を掲示しています。


 患者さんの分解点検や修理中、たまに胸のところといいいますか、普通の人間であれば心臓のところにかつて生身だったころの自分自身であるご遺骨が入ったステンレスカプセルが組み込まれている方もいらっしゃって、それを見るとその方の家族さんの思いを感じて胸が張り裂けそうな気持ちになったりします。なぜかというと火葬されたということは昔亡くなった方か、何らかの理由で腐乱死体になった経験があるということなのです。だから後者の場合はなるべく死因を知らないでいたいのです。親御さんからの「未来」という貴重な贈り物である機械の体。それを目の当たりにして仕事することに毎回引き締まる思いです。


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