石きり
金子ふみよ
第1話 第一場面
思わず目を閉じた。潮の匂いと味がした。見えたのは海の中だった。呼吸ができない、と思った。なぜなら僕は人間で、そこは海の中だから。ところが息はできて、海の中と思われていた空間は実際ではなかった。いちばん近いのはプラネタリウムだろうか。見上げると真っ黒な天上に色とりどりの花火が続々と打ちあがっていた。きらめく星々に見えた。耳をつんざくけたたましい音が、懐かしくさえあった。僕はいつの頃からか花火を見なくなった。人ごみも虫刺されも轟音も苦手になった。ところがその時はむしろいやではなかった。
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