クロユリ

ゆぐ

遺書

 鈴木康太様へ


 あなたがこれを見ているということは、あなたを殺そし損ねているということですね。

 正直、私はあなたといれてよかった、と思っています。しかし、あなたの彼女でいることは、嫌でした。友達以上、彼女未満の関係が、私たちにはちょうどよかったのかもしれません。

 あなたと共にした初夜は、楽しかったです。でもそこから急に、勃起不全となり、私たちが夜を過ごすことは、劇的に減って行きました。でもそれは、治療をちゃんと受ければ、いつかは治ると信じていました。少しでも手助けができるなら、私は体を貸すことは躊躇ちゅうちょしませんでした。でもあなたが突然に勃つようになった時、私は嬉しかったでした。安定して勃っていたわけではありませんでしたが、私たちの苦労が実った瞬間でした。

 でもそれと同時期に、家に帰ってくる時間が遅くなりました。私はあなたが何か隠し事をしているのでは、と思い、あなたを尾行することにしました。そしたら、あなたは女性とラブホに入っていくのが見えました。同封してあるのが、その時の写真です。私はあなたに少しでも気持ちよくなってもらおう、とアダルトビデオを見漁り、AV事務所の面接を受け、AV女優としてデビューもしました。世間に私のハレンチな行為を見られる恥ずかしさよりも、あなたとの営みが、少しでも良くなればという気持ちがまさっていました。学んだテクニックで、あなたを気持ち良くさせるのは嬉しかったし、私も興奮して濡れました。

 でもあなたは、見知らぬ女とのラブホ通いはやめなかった。今度は愛人のことも調べてみることにしました。勤務先、住所、調べられる物は調べました。そしたら、あなたの愛人は男性だったことを知りました。愛人の家について行き、『真島心』と表札に書かれて、性別がわからない名前だったので、あなたが、こそこそと自室でアルバムを見ていたのは知っていたので、拝見し、男性だとわかり、ショックでした。私は見ず知らずの男性に犯されているチンポをしゃぶっていたのか、と想像してしまい、その場でゲロを吐いてしまいました。一応ちゃんと掃除はしました。

 そのあとはいろんな感情が湧き上がりました。私はなんのためにAV女優になったのか。なんのために毎晩、気持ちよくないセックスをしていたのか。なんのたまにあなたと一緒にいたのか。ひとしきりに考えた結果、あなたを振り向かせるために、あなたを殺して、次にあなたの愛人を殺して、その後、私も死にます。正常では無い、と思っているかもしれませんが、わたいは至って正常です。むしろ元気です。

 最後に、最初にも書きましたが、あなたと一緒にいた時間は楽しかったですし、かけがえのない財産でした。ですが壊したのはあなたです。決して勃起不全だからの問題ではなく、あなたの態度が気に食わなかっただけです。私という存在がいるのに、他の人間に手を出して、さぞ、勃起不全が治ってきたみたいな感じで、他の人間がくわえた萎えちんを口に入れさせたあなたを許しません。私以外の人間に、愛を注いだのも許しません。私が心の底から許せるまで、あなたへの殺意は消えません。私を愛さなかったあなたが悪いです。


 今まで一緒にいてくれてありがとうございました。


                            坂下 恵

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る