学ぶ場所と方法は、それぞれに答えがある。
星咲 紗和(ほしざき さわ)
第1話 学びの多様性は必要不可欠
私は定時制高校で学ぶという選択をしました。それは、自分自身にとってベストな学びの形を探し出す旅の始まりでした。中学時代、友達はほとんどおらず、いじめや不登校で学ぶ環境は整っていませんでした。学校に行けたとしても、周囲の目が気になり、心から学びに集中することはできませんでした。そんな私が、高校進学を決めた時、一部の親戚から「なんでわざわざ定時制なの?」と反対の声を受けたのを覚えています。けれど、心の中では「ここに行くしかない」と確信していました。
定時制高校の門をくぐったその日から、私の学びの形は変わり始めました。朝が苦手な私にとって、夕方から始まる授業はちょうどよく、体力や集中力をうまく配分できたのです。さらに、教室にはさまざまな背景を持つ人たちが集まっており、「学びの場にも多様性があるんだ」と初めて実感しました。私より年上のクラスメイトもいれば、家庭の事情で昼間に働きながら通う人もいました。それぞれが違う理由でここに来ていて、学ぶ目的も違う。けれど、同じ場所で学んでいる。その姿を見て、学びに年齢も経歴も関係ないと気づかされたのです。
私自身、最初は不安でいっぱいでした。「学力が足りない」「続けられるかな」――そんな気持ちが頭をよぎり、授業についていけるのか心配でした。でも、授業が始まると、先生たちが一つひとつ丁寧に教えてくれるおかげで、自分のペースで理解を深められるようになりました。そして、学ぶことの面白さに気づき始めたのです。
社会科の授業が特に好きでした。歴史の授業で過去の出来事を紐解き、地理の授業で世界を旅するような気持ちになり、公民では社会の仕組みを知ることが楽しくて仕方ありませんでした。学ぶことは、単なる教科書の知識を得るだけではなく、自分の世界を広げる旅だと感じるようになりました。
私はここで、学びの多様性がいかに大切かを知りました。誰もが同じように学べるわけではないし、同じ方法が合うわけでもない。それぞれに合ったペースや環境があってこそ、学びが意味を持つのです。定時制高校という選択は、まさに私にとっての答えでした。学び方に正解はなく、その人に合った学びがあるだけ。それを実感した最初の一歩が、この場所だったのです。
つづく。
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