聞きなれた声
天川裕司
聞きなれた声
タイトル:聞きなれた声
俺はウォークマンを聴きながら
バイクを走らせてツーリングするのが好きだ。
でもウォークマンと言っても昔ながらの
カセットテープに吹き込んだ音源で、
キュルキュル巻き戻したり、
A面 B面を変える時にはカシャッと音が鳴ったり、
レトロクラシックをそのまま
地(じ)で行ってるような俺。
「でもま、こうゆうのもイイよね♪」
でもある時、不思議な現象に見舞われたのだ。
いつものようにウォークマンを聴いていた時。
「あなたの〜♪愛を〜♫……ブブ…!ブツッ!…」
聴き過ぎたテープが擦り切れて、
もう音が聴けなくなるのかなぁ
なんて思ったその矢先。
「…ブブ…ブブブ…!…左へ曲がれ…左へ曲がれ…」
「…は?な、なに?」
いきなり変な声が聞こえたんだ。
でもいきなりそんなこと言われたって
何も出来ないからそのまま真っ直ぐ走ってると…
「う、うわっ!!」
危なかった。
危うく出会い頭でトラックと正面衝突しかけた。
そしてこんな同じような事が
それから3度続いたんだ。
声を無視して走り、
2度目の時には頭上から鉄筋が落ちてきた。
これも間一髪交わした感じ。
そして3度目の時には曲がり角から
急に男の子が飛び出してきて
危うく轢きかけた。
「…あの声…」
その時でもあの謎の声は
右へ曲がれ、や、左へ曲がれ…などと
俺を諭すように言ってきていた。
「…あの声の通りに従ってたら、こんな事なかったのかな…」
そう思い始める自分に気づいて居た。
つまりその声に従って居れば事故回避できる。
危ない目に遭ったのは全部、
その声が指示してきた道とは逆の道での事。
それと同時に、
「どこかで聞き憶えのある声…?」
と言うことにも気づいた。
俺はそれから、
「あの声に従って走ってみよう…」
と言う気になりその通りに動いてみた。
すると極めつけの出来事。
「…その道を左に曲がれ…」
と同じように聞こえた時、その通り左に折れると、
ガシャアアアアン!!とものすごい音がして
俺の背後でトラックと車が正面衝突していた。
「あ…危なかった…あのまま右に曲がってたら俺…」
予定としては右に曲がるはずだったんだ。
いつも聴いてる音楽の途中で聞こえてくるその声。
ブブ…ブブブ…とバグるように音が途切れ、
その合間に聞こえてくるその声。
その声には確かに聞き憶えがあった。
「……誰の声だったんだ…?」
しばらく考えていると、
なんとなく思い当たる節があるのに気づく。
「もしかして…!」
俺は自宅に帰り、
昔取ったホームビデオを見直してみた。
高校の時に撮ったホームビデオ。
そこに俺の友達も何人か一緒に映ってる。
その中の、柳谷という友達の声。
「…こいつの声だ…多分そうだ…?」
あまりに不思議な出来事と、普段、
絶対出会わないような超常現象とも認めたため、
俺は新聞社や雑誌社など
メディアの力をフル活用し、協力者を求めた。
すると同じようにスクープを
欲しがっていた何人かが現れてくれ、
俺の要望を聞いてくれたんだ。
メディア人「これがそのカセットテープとビデオですね?」
「あ、そうですお願いします!」
中には警察とも知り合いの人が来てくれていて、
声聞鑑定に精通した人もそこに居た。
鑑定人「……一致してますね多分…」
「…本当ですか…?」
1つの驚きは、これがもし心霊現象の類なら
カセットテープでバグるように紛れ込んでいた
あの声は証拠として
残らないだろうと思っていたが、
それがちゃんと残っていたこと。
つまり第三者に、
それを証拠品として提示する事ができたこと。
これをもとに、
テープに紛れ込んでいたあの謎の声が
ホームビデオでしゃべっていた
あの柳谷の声と声聞が一致している…
という事が立証されたんだ。
さらに少し思い出す形で驚いたのは、
そのカセットテープ、実は上録りする形で
新しい音楽を吹き込んでおり、
その以前にはふざけてデッキとマイクを使い、
友達と一緒にそのカセットテープに
声を吹き込んでいたこと。
柳谷もその時一緒におり、
一緒に声を吹き込んで居た。
そんな前に録音していた声が
新しく上塗りの形で録音した
音楽の背後から聴こえる事は確かにあるが、
言葉そのものが変わる事は絶対ない。
あのとき柳谷は「右へ曲がれ、左へ曲がれ」
などとは絶対言ってなかった。
各自がカラオケの練習で、
自分の好きな歌を歌ってたんだから。
これは少し前に起きた出来事だったが、
街中を歩いていたり
空を見上げたりする時にやっぱり思う。
「お前…守ってくれて居たのか、もしかして…」
柳谷は高校を一緒に卒業して大学へ入学し、
それからすぐ事故で亡くなっていた。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=P-e4kFxVvqQ
聞きなれた声 天川裕司 @tenkawayuji
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