雨と車と三つの死体

@SNALEKILL

プロローグ

午後五時三〇分


 永遠にも思える刹那せつなの後、私の車は大きくつんのめってから停まった。


 ハンドルを強く握りしめたまま、私は暫く硬直していた。ワイパーの動く音と、静かな雨音を背景に、心臓の鼓動が耳障りだった。


 どのくらい経っただろうか。我に返り、ハンドルから自身の手を引きはがした。震える手でドアを開け、外に出る。雨音が押し寄せ、冷たい秋雨が身体を濡らしていく。


 ゆっくりとした足取りで、車の後方へ進む。スニーカーに雨水が染みこむが、気にしている余裕は無い。


 を目前にして、私は立ち止まった。


 黒いアスファルトの路面は、流れる雨水の層に覆われていた。黒い水面のその上に、男の体が一つ、無造作に捨て置かれていた。


「なぜこうなってしまったの?」


 目の前の男はピクリとも動かなかった。秋雨に全身を濡らすに任せ、私はその場で立ち尽くしていた。

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