ディストピアで家畜扱いされてるケモミミヒロインを助けようとしたら、結局世界を壊しちゃいました。世界が完全消滅する前にスキルでどーにか作り直します。 ~スキル『増築』で魔王城はセカイになる~
第31話 セラートの過去1/2(セラート視点)
第31話 セラートの過去1/2(セラート視点)
×××
自分は周りよりも頭がいい。
他のみんなを思い通りにするのは簡単だ。
この世界は、自分を中心に動いてる。
そのはずだった。
あの二人の人間と出会うまでは。
「驚いたな……仲間を庇うなんて」
「養殖場だとあるらしいぜ。群れのボスを庇う、利他行動とかいうんだとよ」
何かの道具を向けられ、他に何も聞こえなくなるほどの音と共に、仲間は次々と倒れ込んでいた。
何を話しているのかは分からないが、ところどころの言葉は理解できる。
夢の中で使われていた言葉だ。
「にしてもこれ、珍しい色だなァ……」
「加工しちまえば見た目も味も変わらねェよ。さ、撃て撃て」
バァン! という音と共に、体に乗っかった仲間が揺れ、イヤな衝撃が伝わる。
……体が震えてきた。
木から滑り落ちそうになるとか、そういうことよりもっと恐ろしいことに遭っていると気が付く。
「あら、貫通すると思ったのにな」
「弾残ってっか?」
「丁度切れちった。小屋に解体用の道具あるし、それで間に合わそう」
「マジかよ。痛い思いさせなくねェのに」
「断末魔を聞きたくないだけだろ? 逃げねェうちに連れて行くぞ」
覆い被さっていた仲間が地面に転がされる。
この子は一緒に木の実を食べた……。
人間からギュッと腕を掴まれる。
「やめてっ」
そう叫んだ。
なぜか、この言葉の使い方はこれで合っていると感じていた。
「!?!? こ、コイツ今、喋ったぞ? 人間じゃあ……ないよな?」
「落ち着け。この耳と尻尾、コイツは紛れもなく獣人だ。しかし喋るとは、誰かが言葉を教えてたにしろ覚えられるってのが不可解だ」
「……なあ、やめないか? コイツを殺すの。子どもの肉は少量しか採れねえから数多い方がいいのは分かるけどよ、こんなの殺すなんて人間殺すのと変わりねェよ」
「そこはどうでもいいが。ひとまずコイツから言葉を教えた人物、それを聞きださねェとな。とりあえず死体運べ」
森を囲む苔むした石の壁、その一部分が開いて全く見たことのない景色が目の前に広がる。
足元には草が生えておらず、一直線に地肌が伸びていた。
その先には、背後に広がる壁よりもずっと小さなところがあった。
入ると、壁際に積まれた袋には、みんなが食べていた……見たことのある食べ物が詰まっている。
突然、口元と鼻を人間の手が覆う。
「待て待て待て待て、話違うだろ。殺すなって」
「はァ? ちょ、邪魔すんな。殺らなきゃ死ぬんだぞ。森に戻しても言葉を教えたことになんのは間違いなく俺ら二人だ」
「いい。殺人を犯すよりは、全然マシだ」
「……何考えてんだが。ま、お前がそういうつもりなら最期まで付き合うぜ」
この時、意識を失いかけるほど苦しかったのを覚えている。
私には仲間たちと違い……殺したくない理由があるらしかった。
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