第24話 獣人のココロ 2/4

「掟……ですか」

「そうダ。……何ダ? キサマ、人間どもの世界にいたのカ。キサマの魂、汚れていル。だが、いイ。キサマが掟を守るなら、仲間として迎えル。子供はそのうち一人までなら産ませてやル。カワイイからナ」

「その、掟とは?」

「一つだけダ。強さ磨くため、誰かを助けてはならなイ」

「分かりました。私の名前はセラートです。掟を守るので、仲間に入れてくださいっ」

「いいだろウ。キサマを仲間として迎えいれル。我が名はトントだ、よろしク」


 偉そーに、何が掟だ。

 セラートだって、そんなくだらねーヤツらの仲間になる必要ねーのに……。

 頭を下げるセラートの頭を、その毛の塊は土に塗れた手で汚してやがる。


「セラート、本当にこれでいいのか? 何されちまうか分かんねーのに」

「……ここまでありがとう」

「待て待て、もう少し考えてみろよ。ここのメンツに家畜だった獣人は見るからにいねーし、さっきいたアイツの怪我だってコイツらの仕業かもしんねーんだぞ」

「もしそうなら、仲間に入るようあの人を説得する。心配いらない、上手くやれる」

「掟だって、キミの世話好きなとこと合わないじゃないか」

「細かいことはいいよ。こういうのを私は待ち望んでいたんだから。きっと、名前を付けてくれた人もここにいる」


 これで、本当にいいのか?

 セラートは幸せそうに微笑むと、潜んでる目の群れへと混ざっていった。


「そこのヒューマンもこイ。オマエは我らの敵と戦エ」


 ん、敵? ……そもそもここはある意味、できたばかりのはずだ。

 コイツらが既に群れてるってのもなんか妙だし、人形が嘘付いてたのか???


(ご主人さま。彼らには実体がなかった、とはいえ存在はしていたのです。既に幾度かの会話は起きており、気に入らない相手集団が元々居たのでしょう)

「ふーん…‥って待てよ、なんか想像と違う。オレの魔法が失敗して、みんな実体をなくしたんじゃないの?」

(魔族側の世界は勇者が切り離した際に、誰もが実体を持たない世界となっておりますよ)


 ……んん? そうなんだ。

 でもまあ、なんでもいいか。


「なんダ? 来るのカ? 来ないのカ? 答えはどちらかにしロ」

「待てよ、その前に掟を破ったらどうなる」

「殺して死肉をばら撒ク」

「……何だって?」

「聞き返すナ! 殺すゾ!!!」

「そうかよ。死肉をばら撒くってのは不衛生だからやめろ、変な病気起こすぞ」

「病気なんぞで死ぬのは人間だけダ」


 んん、大丈夫なのかコイツらは。

 この毛むくじゃらは血の気多いみたいだし、その後ろの目たちはセラートにイヤらしい視線を向けてやがる。

 セラートがオレと離れたいにしても、まだもう少し様子を見たほうがいいか。


「まっいいぜ。オレはシヘタだ、戦ってやるッ!」

「その意気だ! ヒューマン!!! だがヒューマンのままでは仲間に入れてやれン」


 なんだ? 毛むくじゃらがこちらへ棒っ切れを向けてき……うわあああああ!!!

 体が変だ、妙に熱い、内側から強い力で耳や目や鼻が押し曲げられてくようだあああっ!!! いってえええエエエ!!!


「敵は女や老人どもの群れダ。そこに喋れない獣人共も集まってきていル。アレは人間側の世界にいたことでああなったのだろう、悲劇的であル」


 な、何も起きなかったみてーに話すなよ。

 クッソっ、何かの魔法か?

 もう痛くはねェけど、腕がトントみてーに毛むくじゃらだ。

 っつーかさっきの話、セラートに名前を付けたヤツって、もしかしなくてもそっちにいるんじゃ……。

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