打ち切りバッドエンドの不人気アニメのモブ友人キャラに転生したけど死にたくない

@noskilldenoyoung

第1話 転生して6年後

 ステラアデプト。

 有名監督、有名シナリオライター、有名音楽家が作る大作アニメとして鳴り物入りで登場した作品だ。有名クリエイターが集まったのにタイトルが言語統一されてないオサレタイトルなのはやばいのではないかと今思えば最初から怪しまれていたのを覚えている。


 たぶん小犬っぽいイメージの男の娘の名前として名付けたのだろう主人公のプロキオンが美少女と疑似百合しながらたぶん成長して世界を救う予定だったんだろうなというアニメだった。


 だが結局このアニメは糞アニメとして歴史に名を残し黒歴史になった。


 主人公が全然活躍していないを初めとしたの糞展開による不評が続いて低視聴率が続いた結果やる気を失った脚本が最終回で星の達人とやらになったラスボスが世界をぶん回して滅亡させるとかいうとんでもない糞展開で終わりを迎えた。


 ちなみに視聴者からはリアルぶん投げエンドアニメという通称をいただいた。脚本はこれを狙っていたと思われるがぶっちゃけ悪い意味でバズっただけでありこれに関わった音楽家以外のクリエイターの評価はとんでもなく下がった。


 本来ならまあそんな糞アニメもあるかくらいの感想しか俺は抱かないのだがそうもいっていられない事情が出来てしまった。


「アステリオス、ほら、外行こうよ!」

「行きたくないんだよ! 森は危険だから!」

「そんなことないから、ね。行こ?」

「プロキオンはいつもそう言うが危険だから! 行かない!」

「わがまま言わないの!」


 そう、美少女めいた男の娘主人公のプロキオンが序盤でフェードアウトする幼馴染のモブのアステリオスに転生した俺を引きずり出そうとしてくるからだ。



 この世界がステラアデプトの世界だと気付かされたのは特徴的な世界設定とプロキオンと俺の名前からだった。


 星が一つもない。シナリオライター曰くビビっと降りてきた設定とかいう星が一つもないという設定がまず不評だった。星がないという事は空は真っ暗だという事でつまり地上は明るくしてもいいが夜の空は大体が黒く塗りつぶさないといけないことになったのだ。ぶっちゃけ不気味だと1話目からしてあんまり受けなかった。


 次に主人公のプロキオンとモブ幼馴染のアステリオス。プロキオンの可愛さを強調するためにいかつい外見にしたというアステリオスは受けなかった。何かプロキオンをレイプしそうとかよく言われてしまう羽目になったのだ。数少ないプロキオンレイプ本の竿役がこいつである。


 そして今外に出たくないと駄々をこねている今の俺でもある。たぶんアニメとかならとんでもなくみっともない見掛け倒しキャラが映っていると思われる。


 星がないこと。美少女風男の娘のプロキオンと転生した俺ことアステリオスが幼馴染として存在していること。ついでに町の名前もファステップの街と一致すること。根拠は少ないが俺がこれ、ステラアデプトの世界じゃね、と思うには十分なものだった。内容をそこそこ細かく覚えているのは突然死する2つ前のシーズンの割と直近の作品だったからだ。



「ほら、行くよ!」

「ぐ、ぐぇえ。力つよ」


 おかしいな。主人公らしい素質の高さはあったけどこんな力強くなかったし気弱だったし何か女とイチャイチャしてばかりで主人公らしく少しくらい活躍しろよと叩かれてばかりだった気がするんだが。



 最初の頃は気弱だったし奥手な印象の深窓の美少女といった感じの美少年だった。ただ、家が隣同士だということもあってよく遊びはしたけど何か俺が外で魔獣に会って以来ビビって家で引きこもるようになってから世話焼き体質が加速した気がする。


 今ではすっかりオカンみたいな感じになってしまった。


「怖くない。魔獣だってこの辺のだったらアストだったら鍛えたら倒せるようになるから、ね? おいしい果物とかもあるし散歩するみたいな気分でちょっと周りを歩こうよ、ね?」

「いや、死ぬから。うっかりしたら死ぬから。治療方法もないのに魔獣がいる森に行くなんて信じられないよ」

「そういうと思って治癒魔法覚えておいたから多少ケガしても大丈夫だよ、多少で済むように僕が守ってあげるから大丈夫だから、ね?」


 プロキオンさん素質はバカ高いという設定はあったけど治癒魔法なんて覚えた描写なかったんですが。しかも思ったより戦闘能力高そうだし、あれ? 原作よりだいぶ強くない? まだ6才だよ? こんなに強いことってある? 


 というか原作の女キャラと全然仲良くなってない。俺の引きこもりを直そうとするばっかりで全然原作の女村人のスピカ(たぶんヒロインのつもりだったけどアニメ自体の不人気で人気が出なかった)とは全然仲良くなってない。何か弱弱しい性格の儚い男の娘が好きなようで俺のヒッキーを直すためにオカン化したプロキオンはお気に召さなかったのか仲良くならなかった。


 原作と全然違う展開になったがこれで大丈夫なのかと不安になったがよく考えたら原作通りいったら糞展開の連続でバッドエンドなのでこれでいいのかもしれない。


 ステラアデプトの糞要素と呼ばれている主人公全然活躍してない点はこの様子だと解消されているんじゃないだろうか。てか力強すぎで全然抵抗できない。見た目はご都合主義みたいな男の娘のままなのに。


「さ、行こう! 大丈夫、危なくなったらちゃんと守るから!」

「筋金入りの引きこもりに無茶言わないでくれ! 外で遊びまわるのはプロキオンが友達とやってればいいよ!」

「駄目だよ。ちゃんと外に出れるようにならないとね」

「ぐぇえええっ!」







 強制外出もうこれで3年になってしまった。毎日のように外に(強制的に)連れ出されて魔物のいる森を歩き回る日々。魔物は何かプロキオンがワンパンしてるので危険は無いけどあらためて現代で引きこもりやってた自分には荷が重すぎる世界だと痛感させられる毎日だった。


 でも良いんだ。所詮は俺は幼馴染設定なだけの序盤だけ出てくるモブ。これから確か10歳の頃王国からやってきたとかいう女騎士に見初められてプロキオンは村を出ることになるんだ。


 それで俺はお役御免のはずさ! たぶん! 間違ってもついでに一緒に同行させられる流れにはならないでほしい! 母親がアストの面倒お願いねとか言っていても、プロキオンが責任をもって一人前にしますと言っていても物語補正が働いてくれるに違いない!



「もしやお前は星の子か?」


 星の達人(文字通り)になるラスボスとエンカウントしました。


 いや、原作で9歳の頃あったなんて描写なかっただろうが! 物語補正はどうした!?









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