虹霓国の女東宮

浮田葉子


天地開闢てんちかいびゃくのこと。


まず混沌こんとんがあった。

どろどろと絶えずうごめいて、けれど形は無い。

神はそこに卵を一つ生んだ。


卵からは龍が生まれた。

卵殻は、軽きものは上に昇り天となり、重きものは下に降り地となった。

混沌の蠢きは緩やかになり、やがて上澄みの海と沈殿する泥とに分かたれた。


天の上には神々が座し、地の下は暗き静寂があった。


龍は地を幾つかの島々に分けた。

そして泥を掬い、捏ねて人を作り、島々に置いた。

人は瞬く間に増え、村ができ、国ができた。

龍は人の中の優れた者を選び、宝玉ほうぎょくを与えた。その者が王となった。


その島々のひとつが今の虹霓国こうげいこくの基である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る