出産してみること三回。出産体験レポートエッセイ
織原深雪
第1話 一回目 長男編
初めての妊娠出産。我が家はいわゆるできちゃった婚の夫婦。
つまり、長男の妊娠を機に結婚に至ったわけですが。
なんだかんだ長男十六歳、結婚も十六年経ち、十七年目に入っております。
さてさて、そんな長男の時の初めての妊娠は、そりゃあ初めてだらけ。
妊娠が分かると転職したての会社には退職を余儀なくされ、無職の妊婦に。
そして、退職から一週間経った頃になって悪化したつわりは水分すら吐いてしまう、固形物が食べられない妊娠悪阻だった。
食べれないし、起きると気持ち悪しいしで寝たきりで過ごすこと一週間。
水もスポドリすらも吐き戻し、胃液まで出たのはこの時が初めてでつわり舐めてましたと言わざるをえない状況だった。
ただ、実家住まいの週末婚夫婦だったので大層母に甘えた生活をしていたおかげで、つわりさえ落ち着けばなんとも優雅な妊婦生活だったと言える。
上げ前据え膳、つわりとして残ったのは異常な眠気だったのでひたすらよく寝る妊婦だったと思う。
二十代前半だったので、体重管理の苦労もなく、出産までに増えた体重は九キロという感じでとっても順調だった。
そう、陣痛が来るまでは!
私は聞いていなかったのだ、我が家の家系が陣痛微弱で初産が時間のかかる難産家系だということを。
なにせ、その家系の例外が母だけで。
母は初産で私の出産時は半日で生まれたと聞いていたから。
きっとちょっと時間がかかっても半日後には自分の子に会えるんだろうと思っていました。
陣痛微弱体質の家系を舐めていました。
結果、私の初産は陣痛開始から五十九時間後の分娩となったのです。
丸二日と半日。
それだけの時間がかかり、ようやく長男誕生と相成ったわけです。
初日は階段上ったり、ヨガボールで跳ねたりしましたがうんともすんとも子宮口二センチから動かず。
二日目には飲む陣痛促進剤を一日三回に分けて飲むものの、痛みは増したのに子宮口は五センチまでしか進まず。
三日目には点滴するし、それでも進まなかったら最後は帝王切開でと言う話をされて、促進剤の影響で二日目の夜は気絶で二時間だけ睡眠し、その前後は五分間隔の痛みにうだうだとベッドでもだえ苦しんで迎えた三日目。
陣痛の波で飲んだウィダーを吐き戻し、眠れず食べれずヘロヘロのまま促進剤の飲み薬追加し、お昼前に点滴の促進剤スタート。
点滴の促進剤の陣痛の波の押し上げ方のレベルが桁違いでした。
いうなれば、飲む促進剤はちょっとずつ進むから各駅停車の電車みたいな感じなんです。
点滴の促進剤は、スピード感的に新幹線です。
ぎゅーんって一気に痛みも増え、陣痛の波も狭まり休みなしで痛くなる。
今まで話せてたし疲れてても平気だったのに、一気に痛いしかなくなるし、人生初の痛みで過呼吸に陥り、看護師さんと助産師さんに呼吸しっかり!と怒られたり。
いや、だってめっちゃ痛いよ?今までのはもしや陣痛ではなかったのでは?クラスの違いでした。
しかも、陣痛室から立ち合いのために一緒にいた旦那に「おい、ちゃんと呼吸位しろよ」とか言われる。
いまなら「おいこら、お前この痛み代わってみろや‼」くらい返したいところだが、陣痛マックスの痛みで過呼吸に溺れている現状では心の中でしか反論できませんでした。ちゃんと心の中では反論してたけど、現実は呼吸で手一杯。
そうして苦しむこと二時間でようやくあれほど頑なだった子宮口が八センチに!
「さ、分娩室に移動するわよ」
という看護師さんの言葉に、へ?こんな痛みの波にさらされながら歩いて移動だと?!となったのも思い出である。
一番近い陣痛待機室だったので分娩室目の前だったのですが、この時すでに睡眠不足と栄養不足でヘロヘロだった私にはめちゃめちゃハードルの高い難儀な仕事だと思いました。
ちゃんと歩いて分娩室に行き、今度は踏ん張るのを我慢する感じに。
「なんか、でそうなんですけれど!」
このころには過呼吸も落ち着き話せた私は、分娩台準備中の看護師さんに言う。
「あぁ、間違いなく赤ちゃんだから!まだ力んじゃ駄目よ!」
えぇぇぇ、こんなに出したいのに!と思いながらも待ってるうちに準備も整い、立ち合いの旦那も準備して頭の方へ。
そうして力むこと三十分ほどで、長男誕生。
陣痛が長すぎて、分娩室入ったらあっという間じゃんと思ったもんです。
頭が出たのにお腹に残ってる足で最後までお腹を蹴飛ばして出て来た、そんな長男は十六歳。
八歳違う弟の面倒も見てくれる、バイト代で二歳下の妹にお小遣いまであげる。
大変、気の良いお兄ちゃんとなっております。
ちなみに、産後出血も多かった。
睡眠不足の、栄養不足に出血も重なり貧血度合いが強かったので立ち上がりトイレに行けず、気づけばカテーテルされていたのも、この時が初でした。
ぶっちゃけ、会陰切開後を麻酔して縫う方が地味に痛くてカテーテル全く気付いてませんでした。
その後は初めての育児に翻弄されていきますが、今回はここまで。
とりあえず、初産ってこんなに大変なのという問いに母から、伯母も父方も母方の祖母もみんな初産四十八時間越えてるのよねと聞いて、自分もなかなか進まなかったことには納得したけれど、やや出産に関してしばらくいいやと思ったのは言うまでもありません。
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