BMI捜査官

マッシー

第1話 犯罪捜査の基本

 犯罪捜査は、張り込みや聞き込みをして、犯人の足取りを追い、髪の毛一本まで見逃さずに証拠物件を集めて立件するという時代は終わったと言われるようになったのは、BMI捜査が実用化してからである。

 私はそのような捜査を担当する、言わばBMIのオペレーターである。


 BMI(ブレイン・マシン・インターフェイス)、いわゆる脳と機械を繋ぐ装置は、かなり前からその発想はあっても、実用化したのは最近である。

 初期のBMIは、性犯罪に巻き込まれて、それがトラウマになり、毎晩悪夢を見るというパニック障害に陥り、自傷行為をするまでになった女性たちを救うために、BMIを用いて脳幹部を刺激して、GABA(γ-アミノ酪酸)やインターフェロンを分泌させ、楽しい夢しか見せないようにするために使われたのが最初であった。

 やがて彼女たちは悪夢を見なくなり、救われた事例が多数確認された。

 

 次には、後天的に視力を失った人の視神経にゴーグルの映像を送り、奥さんと再会した喜びを味合わせたという事例がニュースになるようになった。

 私としては、年をとった奥さんを見せるより、心の奥にある二十歳の頃の奥さんを思わせていた方がいいと思うのだが・・・

 同様に、耳が聞こえなくなった人の聴覚神経に収音機で集めた音の信号を送り、家族で会話ができるようにした。

 その頃は、いいずれにしても、外界の刺激をBMIを介して脳内の神経回路に送るという一方通行的なものであった。


 脳と機械の双方でやり取りができるようになったのは、京阪大学のお茶の水博士や中洲産業大学の田森教授やすすきの産業大学の敷島博士たちの精力的な研究のたまものである。


 BMIで頭の中が覗けるようになったので、犯罪捜査にとってBMIは画期的な捜査手段になった。

 しかし、昔から警察と犯罪者の知恵比べは「いたちごっこ」 と言われているように、BMIにおいても、それは同様であった。

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