白い町

氷魚

プロローグ



ザプンッ…。


針に刺されたような痛みが体中を包む。苦しい。息ができない。体が重くて、上に行けない。自分の体が鉛みたいだ。浮くどころか、沈んでいく。腕を振るたびに沈んでいく。海の底の何かに引っ張られているかのように。重力に逆らえず、そのまま底へ…。


深くて、暗くて、何も見えない。何もない底の世界へと連れ込まれてしまう。必死に足掻いて、もがく。


手と足をバタバタさせながらも、「生きたい」と、もがく。音が聞こえない。静寂な世界が、より絶望を与える。


目を開けて、上にいるであろう彼に手を伸ばす。ーーそれは、助けを求める手なのか、はたまた捕まえようとしている手なのか。


ゴポォッ!


「かはっ」


酸素が奪われていく。


冗談じゃねぇ。

こんな所で死んでたまるか。


俺は、信じていたんだ。あなたを。あなたはやっていないって。そう信じていたし、信じたかった。


あ、頬に何か冷たいものが…。







 

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