知らない子【会話のみ】

☆ほしい

第1話

「ねえ、数学の宿題やった?」


「やったけど、全然わかんなかった!最後の問題とか意味不明じゃない?」


「わかるー!なんで三角形がこんなに難しいのか、謎だよね。」「


三角形が謎って何それ。ちゃんと授業聞いてないからでしょ。」


「いやいや、聞いてても難しいんだって。なんで角度とか測らなきゃいけないの?」


「それ言ったら、数学全部いらないじゃん。」


「正直いらないと思うんだけどね。大人になって使わないでしょ、あんなの。」


「あー、わかる。私はもう適当にやって、終わればいい派。」


「それで終わっても成績下がるじゃん。」


「別にいいもん。どうせテストの範囲忘れるし。」


「あー、それな。覚える意味ある?って思うよね。」


「ていうか、先生がさ、『数学は人生に役立つ』とか言うの、ちょっと胡散臭くない?」


「胡散臭いって、そんなこと言ったら怒られるよ。」


「でも、本当にそう思うんだもん!」


「確かに……でも、他に役立つ教科ある?」


「役立つかどうかで言えば……体育?」


「体育!?」


「いや、ほら、体力つけるのは大事でしょ。」


「でも、あれきついよね。特に持久走とか。」


「持久走は地獄。あれだけは廃止してほしい。」


「そうそう、私、あれのせいで体調崩したことあるし。」


「え、マジで?」


「うん。めっちゃ寒い日に走らされて、次の日熱出た。」


「それ、体育のせいなの?」


「だって、無理やり走らせるからだよ。」


「まあ、確かにそういうのはちょっとね……。」


「体育の話してると、あれ思い出すんだよね。」


「何を?」


「昔、体育館で変な話なかった?」


「変な話って……あれのこと?」


「あれって何?」


「知らないの?体育館の“あの噂”。」


「え、何それ。怖い話?」


「まあ、怖いっていうか、不気味って感じかな。」


「やめてよ!怖い話苦手なんだから!」


「大丈夫だって。ただの噂だから。」


「でも、どうせそういうのって気になるんでしょ?」


「……まあ、ちょっとだけ気になる。」


「ほらね!じゃあ話すよ。体育館で夜遅くまで残ってると、誰もいないはずのステージから音が聞こえるって話。」


「ステージから?何の音?」


「ピアノとか、誰かが走る音とか……。」


「走る音?」


「そう。しかも、その音がだんだん近づいてくるんだって。」


「やめて!そういうの本当に無理だから!」


「だから、噂だってば。実際にそんなこと起きないから。」


「でも、噂ってさ、何もないところから生まれるわけじゃないよね?」


「え、どういうこと?」


「誰かが何か見たとか、聞いたとか、そういうのが元になってるんじゃない?」


「やめてって!話すのやめよ?」


「いや、でも面白いじゃん。ほら、他にもあるよね。」


「他って?」「体育館じゃなくて、廊下の窓とか。」


「廊下?窓がどうしたの?」


「夜、学校に残ってると、窓に“誰か”が映るって……。」


「やだやだやだ!それ以上言わないで!」


「大丈夫だって。ほら、今は昼間だし。」


「でも、そういう話してると、夜に思い出しちゃうじゃん!」


「だから昼間に楽しんでおくのがいいんだよ。」


「……でも、本当に誰か映ったらどうするの?」


「どうするって……いや、映らないってば。」


***


「やだやだ!もう怖い話はやめてよ!」


「怖い話って言ってもさ、学校ってそういうの多いじゃん。」


「確かに。七不思議とかってどこの学校にもあるよね。」


「うん。ほら、うちの学校だと階段のやつとかもあるじゃん。」


「あー、あれね。夜になると階段が増えるってやつ?」


「そうそう。でも、あれってさ、ただの数え間違いじゃないの?」


「だと思うけど……昔、先輩が“本当に増えた”って言ってたんだよね。」


「え、何それ?具体的に聞いたことある?」


「うん。夜遅くまで文化祭の準備してて、帰るときに“いつもより一段多い”って気づいたんだって。」


「疲れてただけじゃないの?」


「そう思うでしょ?でも、普通、数え間違えても一段分だけっておかしくない?」


「……確かに。他の階段とかでも一段分だけ増えるって話聞くよね。」


「なんで一段なんだろう……?」


「ねえ、やめようよ、そういう話。普通に怖いから。」


「でもさ、階段増える話って結構あるけど、なんで“増えたらダメ”なのかって知らなくない?」


「あ、知らない?“増えた階段を下りると、戻れなくなる”っていうの。」


「戻れなくなる……?」


「そう。次の日、もうその人が学校に来なくなるんだって。」


「え、それただの休みとかじゃなくて?」


「いや、家族も“どこに行ったかわからない”ってなるんだって。」


「やだやだやだ!そんな話聞きたくなかった!」


「でも、そんなこと本当にあるのかな……?」


「わからない。でも、階段が増えるって話と、いなくなるって話がセットであるのが怖いよね。」


「セットって、誰が最初に言い出したんだろうね……。」


「誰だろうね。でも、そういうのって“最初に話した人もいなくなる”とかありそうじゃない?」


「やめてよ!言ってるだけでゾクッとするんだけど……。」


「でも、階段の話だけじゃなくて、ほら、トイレとかもさ……。」


「トイレ!?ちょっと、それって“例の”やつじゃないの?」


「例のやつって何?」


「知らないの?ほら、うちの学校の2階の東側のトイレ。“3番目の個室に入ると……”ってやつ。」


「あー、あるある!あれって、なんで3番目なんだろうね?」


「知らない。でも、“3番目に入るとノックされる”とか、“鏡に誰か映る”とか……。」


「やだ!もうその話やめて!トイレ行けなくなる!」


「でも、本当に3番目だけっていうの、不思議だよね。他の個室は普通なのに。」「ねえ、これってただの偶然だよね?」


「どうだろうね……でも、前にその3番目に入った子が、“鍵が開かなくなった”って言ってたよ。」


「開かなくなった!?それ、閉じ込められたってこと!?」


「そう。でも、その子、“誰かが外から押さえてる感じがした”って……。」


「やだ!本当に無理!トイレ行くの怖いじゃん!」


「でも、昼間なら平気でしょ。怖いのは夜だけだし。」


「でもさ……夜のトイレでそういうことが起きたら、どうするの……?」


「どうするって……じっとしてるしかないんじゃない?」


「いや、そんなの無理だよ!じっとしてたら……」


「……誰かがドアを開けてくるとか?」

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