世界救い終わったから喫茶店を開いたら新しい物語の舞台にされた所為で前作主人公みたいになってる
カラスバ
第1話
この世界に転生してから既に20年余りが経つ。
それまでに幾度となく修羅場を経験してきた。
時代や世界観的には現代社会ではあったが、この世界の裏側には『アンノウン』と呼ばれる化け物を操る組織『プレデター』が存在していた。
裏社会とはいえ、それは現実的な脅威としてテレビで放送される事もあったし、日常的な危険として生活を脅かす明確な敵だった。
その存在を知った時、俺はピンときた。
ああ。
これが、俺が転生した理由なのか、と。
実際俺がこの世界に転生した時、一つのチート能力を授かった。
どうして普通の現代社会に転生するだけなのにこんな物騒な能力を貰うんだと思っていたが、これは『アンノウン』と対峙するために必要だったのだろう。
『ラプラスブレイド!!』
「変身!」
かくして俺は、『アンノウン』と戦うヒーロー『ラプラス』となって彼等との戦いに至った。
――戦いは俺が15歳の時から始まり、それから10年の月日が経過した。
長い戦いだったが、それでも結果的に『プレデター』を崩壊に導く事には成功した。
そして残されたのは莫大な財産と――虚無感。
端的に言うのならば、「これから俺、どうすれば良いんだ?」だった。
生涯の敵だと思っていた敵がこんな短期間で滅びるとは思ってもみなかった。
無計画だと思われるかもしれないけど、だけど『プレデター』の規模が分からなかったし、それ以上に戦いに没頭するのもなんだかんだで楽しかった。
だが、それも終わってしまった。
『プレデター』は滅び世界は平和になった。
良い事なのだろう、これは。
ヒーローが必要にならないのはとても良い事だ。
無職、万歳。
それで、俺はしばらく前世と同じくオタク生活を送っていた。
ヴァーチャルアイドルの配信を見たり、アニメを見たり。
……そしてそれではさてどうしようと思った時、俺はピンと来たのだ。
そうだ、喫茶店をやろう。
幸い財産は余るほどにあるので喫茶店を一つくらい建てるのは造作もない。
黒字に届かなくても、問題のない財産だ。
だから趣味で開いても大丈夫。
前世では「アルバイトの子に「これじゃあこの店潰れちゃいますよー」とか言われながら喫茶店を経営したい」とか思っていたが、まさか異世界でその夢が叶うとは思わなかった。
ともあれ、喫茶店『猫の夢』はオープンした。
今では美味いカルボナーラが食べられる店として、結構ここら辺では有名になっている。
……ただ、一つ問題があった。
「……ちょっと茜。そういうのは閉店後に」
「えーっ、良いじゃん減るものじゃああるまいしぃー」
二人のアルバイトの女の子が、人のいない店内でイチャイチャしている様子を見せられているのは何の拷問だ?
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