異世界行って官能小説書いたら意外と需要があった。

ねぎま

第1話 モテ期到来じゃなかったんかい?

「野辺山くん。いつまで昼寝してるの? そろそろシフトチェンジの時間よ。さあ、早くフロアに行った、行った! 若いんだから即行動に移す! ハイ! ハイ!」


 バイトしているカフェ店長兼オーナーの宮森こずえが僕の肩を軽く叩きながら急き立てる。

 押しの強さ相変わらずだ。

 宮森店長の容赦のない威圧に気圧され、入店一月足らずの僕に拒否する権利は無い。

「あ、はい」

 僕が重い腰を上げると、早速店長権限を振りかざしてくる。


「ほんと、最近の若い子ってダメね。根性が座ってないし、覇気も感じられないわ」

 あの……たかだかカフェのフロアスタッフに多くを求められても……。バイト風情の身で、パワハラ云々を言い出すつもりは毛頭ないけど、もうすこし当たりを柔らかくするとかできないものだろうか。

「ほら、ネームプレートがズレてるじゃない」

 そう言って、今度はセクハラ紛いに豊かなバストを僕に押し付けながら、対して傾いてもいないネームプレートをいじくっている。鼻を突く香水もちょっと嫌味なくらいに僕のやわな精神を遠慮容赦なく抉ってくれる。

「さあ、これでいいわ。あら、ヨダレまで垂れて……」

 宮森店長は、店の名入りのカフェエプロンの裾を摘んで僕の口周辺を拭った。

 だから、そういうとこだって……!

「これで完璧だわ。『カフェ・森の山猫亭』の店員にふさわしいイケメンくんの出来上がりね」


 そうこうしてるうちに、僕とシフトが入れ替わる番の女の子が休憩室に入ってきた。

「ああ……疲れたぁー! 何よ、あのバーコードハゲオヤジ。私の胸ばかりジロジロ見やがって、ホント頭にきちゃう!」と、おカンムリのご様子だ。


 カフェ店員にあるまじき暴言を吐くのは、森の山猫亭で一番のベテラン格にあたる、推定Gカップバストの威力も絶大な、自称二十歳独身、ぽっちゃり癒し系女子の海野彩花である。

「こんど来たときはゼッテー睨み返してやるから覚悟しておけ!!」

 威勢が良いというより、若干ヤンキー入ってる? 


 バイト先のカフェ店員は既婚者の宮森店長である女性を除いて四人。

 ちなみに、女店員#2は、可愛らしいを体現したようなキュートで愛くるしいいツインテールがめっちゃお似合いの妹系タイプ。

 女店員#3には、クール系女子でスタイル抜群、ユニセックスな雰囲気でモデル真っ青な女の子。

 四人目の子女店員#4は、ブラビア雑誌から抜け出してきたような、陽キャで笑顔はじける正統派美少女と来た。

 女店員#1は当然、Gカップの元ヤン(だが美人さんだから許す)女史である。

 彼氏持ちは四人中一人。他の四人はフリーだということは確認済み。

 しかも、彼女ら全員があからさまに僕への好意を隠そうとしない子が約四名プラス既婚者の店長だ。


 ところがそんな千載一遇の好機を歓迎する余裕は僕には無い。


 大学浪人(二浪)の僕、野辺山拓郎は一人暮らしをしながら大学合格目指して猛勉強中……のはず。

 一浪までは親からの援助があったが、二浪以降は予備校の学費のみで、食費、アパートの賃料、光熱費等は全てバイトで賄う約束だ。

 そんな折、幸か不幸かアパート近くに出店したばかりの小洒落たカフェがバイト店員を募集していると知る。 僕は早速飛び込みで店のオーナー兼店長へ直談判。即採用決定で喜んだのもつかの間、ようやくカフェでの仕事にも慣れてきた。


 そして、その日の勤務も無事終了。閉店までは店長が売上の集計や、翌日分の食材のチェックを残すのみ。

 僕は店長に「お先で~す」と挨拶をしてから店を出た。

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