第3話【空飛ぶ食パン】

目が覚めると窓からの朝日が私にかかる。


ふと窓の外を見ると何かが飛んでいるのが見える。


目を凝らして見てみるとそれは食パンだった。


空飛ぶ絨毯じゃなくて..食パン...?


そんなことを考えていると、


「陽葵!!今日は空飛ぶ食パンの日だぞ!!」


と玄関付近からライくんの声が聞こえた。


私は急いで支度をして玄関の扉を開けると、


「陽葵!!遅いぞ!!」


と怒鳴るライくんと、


それを宥めるスイくんが居た。


「えっと...空飛ぶ絨毯じゃなくて食パン..なの?」


「空飛ぶ絨毯?陽葵の世界ではそれが普通なのか?」


私がそう問うと


『何言ってんだこいつ』みたいな顔をしながら


ライくんが私に質問で返す。


「私の世界では物語の中に空飛ぶ絨毯っていうのがあって...」


「なーんだ!物語の話か」


「まぁ、こっちの世界では食パンが空を飛ぶのは当たり前のことだけどな」


「へぇ...そうなんだ...」


「あ、そういえば陽葵」


私が感心していると


何かを思い出したかのようにライくんが


私に何か言いたげな雰囲気を醸し出した。


「なに?」


「昨日の鉱物パンどうだった?」


「美味しかったよ!!」


「陽葵さんが買ったのってスフェーンロールと琥珀ラスクでしたよね?」


「そうそう!!よく知ってるね!」


「スフェーンロールってなんか素朴じゃない?」


「ん〜...でも私の世界で食べてる味と似てたから懐かしい感じがしたかな〜」


「え"、陽葵の世界ってこんな素朴なもん食ってたのか!?」


「う〜ん...味が素朴っていうか...」


「こっちのパンの見た目がインパクトありすぎるっていうか...」


「琥珀ラスクはどうでした?」


「甘くて美味しかったよ!」


「そういえば琥珀ラスクの雑学知ってますか?」


「雑学?」


「琥珀ラスクはですね...」


そうスイくんが話出そうとした時、


「なぁ、公園行ってみようぜ!!」


と言いながらライくんが走り出す。


「あ、ライ待ってよ!!」


と言いながらライを追いかけるスイくん。


公園...。


って待って?


私ライくん達見失ったら迷子ってこと??


それはやばい!!


そう思いながら私は2人を追いかけた。




「待って..2人とも....速い...」


子供の体力って恐ろしいと思う。


「陽葵!!上見てみろ!!」


そう遠くから言われ見上げると、


沢山の食パンが空を飛んでいた。


よく見ると食パンには色んなデコレーションが


施されている。


チョコだったりジャムだったり


ハムチーズだったり。


種類は様々だった。


「陽葵さん一旦ベンチで休みます?」


「うん...そうするよ...」


「じゃあ俺は空飛ぶ食パン捕まえに行ってくる!!」


食パンを捕まえに...?


そんなことを思いながら


空を飛んでいる食パンをじっくりと観察すると、


誰かが乗っている姿が見えた。


「空飛ぶ食パンはもちろん食べることも出来ますが、それに乗りながらレースすることも出来るんです」


「へぇ〜...すご....」


「あ、さっきの琥珀ラスクの雑学聞きますか?」


「ライくんには話さなくていいの?」


「はい、ライは知ってますから」


「そうなんだ...」


「じゃあ話しますね」


「うん」


「琥珀ラスクはですね、使われてる砂糖の量が多いほど琥珀の透明感は増すんです」


「じゃあ塩が多いほど濁るってこと?」


「そうです!」


「面白いね...」


「そういえば空飛ぶ食パンにチョコのデコレーションがされてるけど溶けないの?」


「僕もイマイチ分からないんですが、見てる限り溶けないチョコを使ってるみたいです」


「空飛ぶ食パンってさどこから飛んできてるの?」


「というか質問攻めみたいになってごめんね...」


「いえ、大丈夫です!」


「空飛ぶ食パンがどこから来てるかは僕達も分からないんです...」


「もしかしたら誰かが飛ばしているのかもしれないですし、自然生成なのかもしれないんです...」


「自然生成って有り得るの..?」


「100%有り得ないとは言い切れないです...」


「なるほどね...」


でも誰かが飛ばしてるって考えたら


どうやって浮かせてるんだろう...。


魔法かなんかが無いと出来ないんじゃないかな...。


「陽葵!!スイ!!見ろよアレ!!」


そう思っていると遠くから


ライくんの声が聞こえた。


ライくんが指差す方を見ると、


大きな食パンが空を飛んでいた。


「あれは...キング目玉焼きじゃないですか!!」


キング目玉焼き..?


私が不思議そうに思っていると


それに気づいたのか


「陽葵さん!キング目玉焼きっていうのは空飛ぶ食パンの中で大分レアなものなんです!!」


「アレは絶対乗るべきです!!」


さっきまで雑学を語っていたスイくんが


子供のように目を輝かせている。


まぁ、子供なんだけどね?


敬語だし、ライくんより大人っぽいし


勘違いしそうになる...。






ライくんが


キング目玉焼き食パンの真下に行くと、


フワフワと降りてきた。


「スイ!陽葵!乗ろうぜ!!」


『うん』そう返事しようと思う前に


ライくんに腕を引っ張られ、


倒れるように乗った。


「ライ...無理やりすぎるよ...」


そう言いながらスイくんも乗ってくる。




思ったより飛ぶ速さは速かった。


「風が気持ちいい〜!!」


そうライくんが叫ぶ。


「陽葵さん、これ食べてみますか?」


そう言いながらスイくんがキング目玉焼きを


指差した。


「逆に聞くけど食べていいの?」


「全然いいですよ!」


「じゃあ....いただきます...」


食パンの真ん中部分、1番美味しいとこ。


さらに目玉焼きも乗っている。


どんな味なんだろう。


そう思いながら少しちぎり、口に入れた。


今まで食べた目玉焼きパンより美味しい?!


目玉焼きは半熟で、パンはふわふわカリカリ。


「美味しいですか?」


「めっっちゃ美味しい!!」


「良かったです」


私がそう答えるとふふっと笑いながら


スイくんが答える。


なんか気恥しい...。






「あ〜今日は楽しかったな!!」


「まぁ陽葵はキング目玉焼き食って感動してただけだけどな」


「いや、ちゃんと空の旅も楽しんでたからね!?」


「ライがはしゃぎすぎてたんでしょ...」


「スイだって楽しんでたくせに!」


「まぁそうだけど...」


「明日は何の日なんだろうな〜」


「じゃ、俺ら帰るな!」


「陽葵、また明日!」


「陽葵さん、また明日」


「うん!またね〜」




はしゃぎすぎて今日はちょっと疲れたかも...。


でもなんだか楽しかった。


というか子供の頃の私...


こんな物語作ってたんだよね?


天才すぎじゃない...?


大人になってから作れなくなっちゃったし...。


子供の頃の視点じゃないと


多分書けなかっただろうし...。


もしかしたら、


子供の頃の私を思い出してもらおうと


誰かが望んで転生しちゃったのかな...。


でも、そう考えると誰が望んだんだろう...。


まぁ仕事で忙しかったし、


こういうのもなんかいいかも...。




そんなことを考えていると


私はいつの間にか眠りに落ちていた。

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へルックを隠れ家と こむぎ/Okome @Okome_komugi

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