第2話【訪れる鉱物パン屋のニウ】
最初ってなんの日だったっけ。
そう考えていくうちに時間が過ぎていく。
外の景色はいつも通り。
その時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴った。
私がドアを開けると
そこにはハリネズミが立っていた。
「鉱物パン屋です!」
「鉱物パンはいかがですか?」
と言いながら私に大きな葉っぱを差し出してきた。
よくよく見ると葉っぱには文字が描いてあり、
メニューのようなものだった。
─────────メニュー────────
『ルビーのフランスパン』
『琥珀ラスク』
『トルマリン・メロンパン』
『スフェーンロール』
『アクアマリンのクロワッサン』
─────────────────────
うーん...
何を選んだらいいのかな。
「あ、お客様、ご利用は初めてですか?」
私が悩んでいると何かを察したのかそう言った。
「え、ぁ...はい」
「それはそれは失礼致しました!」
「初回は無料ですので!」
無料....
「あの..ハリネズミさんの名前ってなんですか?」
「あ、僕はニウです!」
「どうぞお見知り置きを」
「じゃあニウさんのオススメの鉱物パン2つください!!」
「オススメですか...」
「では、琥珀ラスクとスフェーンロールでいいですか?」
「それでいいです」
「では少しお待ちください」
そうニウさんが言いながら後ろを振り向く。
すると、ニウさんの手を伸ばした先が歪み、
亜空間のようなものが現れて中からパンが出てきた。
私が不思議そうに見ていると、
「あ、魔法を見るのは初めてですか?」
「はい」
「この街の人々は使える人が多いですが使えない人も居るのでご安心を!」
「あ、もちろん貴方様も使える日が来ますから!!」
「そういえば、貴方様の名前はなんというんですか?」
「佐藤 陽葵って言います」
「佐藤....あ、転生者ですね?」
「え、分かるんですか?」
「転生者はよくあることなので...」
「人間に転生した人は初めてですけど...」
「他の人は違うんですか?」
「そうですね..大体の者達は動物か何かに転生してます」
「へー...」
「あ!長話してすいません!!」
「こんなことしてたらパンが冷めちゃいますね!」
「温かいうちにお食べ下さい、では」
そう早口で喋った後、
ニウさんは颯爽と次の家へ向かってしまった。
私はそれを唖然と見ていると
「お前って転生者なんだろ?!」
後ろから声がして振り返ると熊の子供...
というか獣人の子供が居た。
「うん」
「やっぱり!!」
「名前なんて言うんだ?」
「佐藤 陽葵だよ、君は?」
「俺はライ!!」
「俺、お前家の隣だから困ったことがあったら頼ってな!!」
「ありがとう」
すごい元気な子だな..。
案外頼りになるかも...。
「そういえばライくんは鉱物パン、何買ったの?」
「トルマリン・メロンパンに決まってる!!」
「僕はアクアマリンのクロワッサンを買ったよ」
ライくんと話をしていると
急に上から声がして驚きながら見上げると
「驚かせちゃってごめんなさい...」
「僕はスイ、ライの友達なんだ」
と喋る鳥が居た。
「そういえば陽葵って鉱物パン食べるの初めてなんだよな?」
「うん..そうだね」
「じゃあ特別に俺らのパン見せてあげるよ!」
そう言いながらライくんとスイくんは
袋からパンを取り出した。
ライくんが持っているトルマリン・メロンパン
はメロンパンの皮の部分が
小さいトルマリンで構成されていて、
とても硬そうに見える。
スイくんが持っている
アクアマリンのクロワッサンは
クロワッサンの背中に小粒のアクアマリンが
生えているような形で、
とても食べにくそうに見える...。
「というか俺らもここで話し込んでたらニウさんと同じだな」
「そうですね、そろそろ僕は家に帰りますね」
「じゃあ俺も帰る」
「あ、明日のこのくらいの時間に鉱物パンの感想教えてな!陽葵。」
「おっけ〜」
そう言って私はライくんが家に帰る
後ろ姿を見届けた後、私も自分の家に入った。
早速食べてみようと思い、
私は袋からスフェーンロールを取り出した。
見た目は...普通のロールパン..。
そう思いながらも私はそれを口にした。
途端、パンの中に入っていたスフェーンは
口の中にバターの香りを巡らせながら
一瞬で消えた。
「美味しい...!」
スフェーンは口の中に入れたら溶けるのに、
スフェーンロール自体を割った時の
スフェーンは固まっている...。
とても不思議だ。
しかも素朴な味がして、とても美味しい...。
気づくとスフェーンロールは
あっという間に食べ終わってしまっていた。
私はワクワクしながら
袋から琥珀ラスクを取り出した。
見た目は透明感があり、すごく綺麗な琥珀。
食べてみるとサクッという音と共に
口の中に砂糖の甘さが広がった。
これはクセになる味かもしれない。
パクパクと食べているうちに
お腹がいっぱいになった。
残りは明日食べるとしよう。
明日、ライくん達と話すの楽しみだな〜。
そう思いながら私は眠りに落ちた。
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