第2話【絵と優しさと】

「俺、藍白さんのSNSフォローしてます」


「そうなの!?奇跡じゃん!!」


「声かける?」


声、、かけたいけど、急に声かけられたら驚いちゃうかもな。


「いや、いいです」


「遠慮しなくてもいいのよ〜?」


「や、急に声かけたら驚いちゃうかなって思って」


「じゃあ私聞いてくるよ?」


どうしよう、、いや、こんなチャンス逃したくない!!


「お願いします」


「了解〜」


そう言って看護師さんは藍白さんの病室へ入っていった。


まさか病院で会うとは思ってもいなかった。


そんなことを考えていたら余計に緊張してきた。




少し時間が経った後、


看護師さんは俺にOKサインを見せた。




「藍白さんですか、?」


「はい」


そう言いながら彼女は微笑んだ。


俺はすぐにそれが本当だということに気がついた。


何故なら、病室1面に藍白さんの投稿で見た絵達があったからだ。


その前に何故、藍白さんの病室だけ


壁も床もベッドもイスも全て


「青」なのだろうか。




「俺、いつも投稿見てます。美術館で藍白さんの作品、見てから綺麗だと思ったので」


「、、そう。今、私の病室変だと思ったでしょ?」


心が見透かされたようだった。


「私はね、青色しか見えないの」


「え、?」


「青以外の色は全て灰色。何故青色だけが見えるのかは私も分からないわ」




「いっそ、全部見えなかったら良かったのにね」




そう言った藍白さんは寂しげに微笑んだ。


その表情は俺の心に何かを突き刺した。


「、、また、藍白さんの病室に来てもいいですか?」


「、、なんで?」


「、、青色が好きだからです」




そう言ったあと、


藍白さんの表情は微かに変わった気がした。














𓂃◌𓈒𓐍𓈒












藍白 鈴 side






私は生まれて間もなく、未知の病気を患った。


その病気の症状は、


『青色以外は見えない』


というものだった。


そのせいで私は小さい頃から虐められたり、


親にも愛されず育ってきた。


当時の私を救ってくれたのはある人の『絵』だった。


その人の名前は『水咲 溯』という綺麗な名前の人だった。


その人との出会いは、あるイベント会場のこと。


一瞬だけだったが色が見えた1つの絵があった。


その人は銀賞だったが、


私は金賞をとっていいほど印象に残っている。






それからというもの、


私は絵を描き続けてはSNSに投稿をしていた。


するとある人からのフォローが来た。


アカウント名は「溯」と書いてあった。


あの人と同じ名前だと思った。


私のフォロワーは10人ほどしか居なくて、


あまりコメントやいいねをしてくれる人は居なかった。


だが、溯さんだけは違った。


溯さんは私が投稿をするとすぐいいねとコメントをしてくれた。


私は溯さんのおかげで


SNS投稿を続けていると言っても


過言では無い。




私は普段、病院で入院している。


私はこの病気のせいで私の病室だけが青色になっている。


壁も床も天井もドアもベッドも全部青色だ。










今日も病室で過ごしていたら看護師さんが入ってきた。


「藍白さん?貴方に会いたい人が居るの。入れてもいいかしら?」


私に会いたい人なんて珍しい。


「分かりました」


「ありがとうございます」


そう言って看護師さんは病室から出て行き、


少ししたら車椅子に乗っている男の人と一緒に入ってきた。


「藍白さんですか、?」


「はい」


そう言った後、彼は病室に置いてある私の絵を見ていた。


「俺、いつも投稿見てます。美術館で藍白さんの作品、見てから綺麗だと思ったので」


私はこれを聞いてとても驚いた。


何故ならこの人はいつも見てくれていた溯さんだということに気がついたからだ。


でも、溯さんは喋っている間も壁や床を見ていた。


多分青色の病室が変だと思っているのだろう。


「、、そう。今、私の病室変だと思ったでしょ?」


この言葉を聞いた彼は驚いた顔をしていた。


多分、図星だったのだろう。


その後、私は彼に自分の病気のことを話した。


「いっそ、全部見えなかったら良かったのにね」


と私がネガティブなことを言うと


彼の表情は少し曇っているように見えた。


だが、彼はまた病室に来ていいかということを私に聞いた。


何故、私の病室にまた来ようとしているのだろうか。


バカにするため?誰かに話すため?


私は疑問に思い、理由を聞いた。


すると彼は


「、、青色が好きだからです」


と言って微笑んだ。


私にはこれが嘘だと思わなかった。


彼の声は優しい声色だったからだ。


そう言って彼と看護師さんは私の部屋を出て行った。


気づいたら私の目には涙が溜まっていた。










𓂃◌𓈒𓐍𓈒








溯 side




そういえば、絵って言ったら嫌な記憶を思い出したな。




俺は昔、コンクールで絵を出したことがある。俺にとって絵は必要不可欠なものだった。


俺のテーマの絵は


『モノクロの世界』


モノクロで質感や立体感を表して書くのが


大好きだった。




もう、好きじゃなくなったけどね。

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