あの夏の青色は出会いの鍵だった

こむぎ/Okome

第1話【青の絵画】

今日、俺は友達に誘われて


美術館へ行くことになった。


正直アートや絵に興味は無い。


見ても何を表しているのかさっぱりだからだ。


でも友達はそれがいいらしい。


意味がわからない。


「溯!!早く行くぞ!!」


と急かす友達の名前は陸斗。


「はいはい」


と言いながら俺は陸斗に着いていく。


美術館の中は持っていたより涼しくて広い。


気がつくと陸斗は美術館の奥の方へ


走っていった。


「おい!!走るなって!」


と俺は陸斗を追うが1つの絵が目に留まった。


その絵は全て青1色で描かれていた。


木も空も地面も建物も何もかもが青だった。


陸斗は追ってこない俺を変に思って俺の所へ来た。


「んだこれ?青ばっかじゃねぇか。変なの」


と言った。


だが、俺には「変」というより「綺麗」という表し方が望ましかった。


もっと知りたい。この人の絵をもっと見てみたい。


そう思いこの絵の作者を見てみると、




【藍白 鈴】




と書いてあった。


すごく綺麗な名前だった。


俺は急いで自身のスマホで『藍白 鈴 絵』と調べた。


すると検索欄には


『藍白 鈴 なぜ青』



『藍白 鈴 絵 下手』




などの『藍白 鈴』を罵倒する文字が並んでいた。


俺はこの人のことを全く知らないのに


何故だかすごくイラついた。


俺は、




『この人の絵はとても綺麗なのに』




ただただそう思った。


『藍白 鈴』はSNSでの投稿もしているらしく、俺はすぐさまフォローしに向かった。


そこで俺はまたもや目を疑った。


フォロワーが俺含め、10人程しか居なかった。


俺的にはもっといるイメージだったからだ。


なぜこんなにも皆は『藍白 鈴』を嫌うのだろうか。


「、、、!」


「、、く、!!」


「溯!!」


陸斗に名前を呼ばれ我に返る。


「ごめん考え事してた」


と言いながら俺はスマホの中の藍白 鈴の絵を見る。


「溯、まだそいつの絵見てんの?」


「うん。なんか興味あるから」


「ふ〜ん」


陸斗は予想していた答えと違ったのか


興味が無さそうな返事をした。




俺はあれからずっと藍白さんのSNS投稿を


毎日チェックし続けている。


あ、もちろんいいねとコメントも忘れずに行っている。


今日は投稿日。


一刻も早く帰って藍白さんの投稿の絵を眺めたい。


「溯?今日の放課後、暇?」


「藍白さんの投稿見るから忙しい」


「ストーカーかよ」


「うるせ」


「歩きスマホしてたら怪我すんぞー?」


「大丈夫だって」


そう言った瞬間俺は足を滑らせて階段から落ちた。


「溯!?!?」


「ちょっ、バカかよ。腹痛てぇ」


俺の哀れな姿を見て爆笑する陸斗。


「、、陸斗」


「んぁ?どした?早く学校行こーぜ?」


「、、やったわ」


「、、まじ?」


「まじ」


「救急車呼ぶわ」


「そうしてくれ」


こいつはこういう時に案外役に立つ奴だ。












「全治2ヶ月ね。しばらくの間は入院ね。」


「、、わかりました」


あの後、すぐに救急車が来て俺は病院に運ばれたらしい。


ちなみに陸斗は学校に事情を説明して一緒に救急車に乗ったようだ。


「大丈夫か?」


「痛てぇよ」


弱々しい俺の反応を見てまたもや陸斗は爆笑する。


「お前、、治ったら覚えとけよ」








「じゃ、俺帰るわ」


「え」


「ん?何?」


「いや、、やっぱ何でもないわ」


「どした〜?怖いのか?」


そう言いながらニヤニヤする陸斗。


実を言うとかなり怖い。


俺が持つ病院のイメージは幽霊だらけのイメージだからだ。


「怖くねぇよ」


「ちぇっ、弱気な溯見れると思ったのになー」


「早く帰れ」


「はいはい」


そう言いながら陸斗は渋々帰って行った。






壁を見ても天井を見ても白い。


病室だから当たり前のことだけど。


スマホをいじりたいがあいにく、


スマホの充電は切れていた。


「暇すぎる、、」


「母さん達に心配かけてそうだな、、充電切れてるし、。」


てか忘れてたけど、藍白さんの投稿も当然見れない。


今日俺は歩きスマホは本当に危険な事だと思った。




次の日になったが、


足がズキズキ痛むので中々俺は寝付けなかった。


今日も1日中何もしないで過ごすのを想像するととても寒気がした。


そこで俺は看護師さんに無理を言って


車椅子で病院内を見回ることを許可してもらった。




ある程度見て回ったが、あまり楽しくない。


自分で提案したにも関わらず、とてもじゃないがつまらなかった。


その時、ある病室の名簿プレートが見えた。


そこには




藍白 鈴 様




と書かれていた。


俺は目を疑った。


「藍白、、さん、?」


「藍白さんのこと知っているの?」


「いえ、同じ名前の人が居たので、、」


「もしかしたら同一人物かもよ?」


「なわけないですよ」


苦笑いしながら答えたが同じ名前の人なんて早々居ない。


「藍白さんはね、画家なのよ!」


「え、?」


「SNS投稿もやっているらしいわ」


「若いのに凄いわよね〜」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る