第一話 夏の憂鬱
第2話
夏に近づくと思い出す、ある事象ーーーー
以前、まだ私が実家にいた頃の話になる。
植木に草花に囲まれた庭の片隅に、
その子達がどういう経緯で家に来たのか詳細は知らないが、母の手入れしてる庭だ。
何か生き物を添えたくなったのだろう。
大人の膝よりも高い、一人で持ち上げるのも大変なぐらい、ずしりと重い
二匹は一緒に来たのか、または別々の経路でで来たのか、これもまた詳細は知らない。
ただ水瓶の中を覗きながら話す母の台詞を思い返せば、この番はとても仲睦まじかった様子を見せていた。
それを聞いて、時折私も餌付けをしては水面に口を開けてくるこの番に、いつしか愛着をもつ様になっていた。
梅雨に入ると必然と煩わしくなる洗濯物の手間その要因たる湿気ーーー雨。
私の心にも湿らせる出来事があったのもこの季節だった。
それは何時もに増して激しい雨がとめどめ無く降り浸ける夕の頃。
雨の
何気に外界を視野に映す。
毎年この時節の現象を只、当たり前に眺めて受け流す。
幾度となく繰り返される風物詩に誰も、何も、疑わない
そう、変わらずーーー不変に。
けれど、それも何時かは終わりを告げる時が来る。
それは唐突に音もなく静かに去って行くものだと、この時そう思わずにはいられなかったーーーそう、変化が在ったのだ。
翌朝、いつも通り部屋中の窓や戸を開け庭に出ると、水瓶の前に小さな赤い個体が横たわっていた。
急いで駆け寄り水瓶を覗く。
もう一匹は外に溢れる事無く、ゆったり水の中を泳いでいる。
瓶の中の水は溢れる程ではないにしろ、やはり昨夜の影響で
何かの拍子で飛び出てしまったのだろう。
可哀想な事をしてしまったと水の中の住人を見つめながら当の本人は知ってか知らずか、変わらぬ姿がそこには在った。
それからしばらくして、またしても思いがけない事が起きてしまった。
一人残されたあの子がーー外側に投げ出された姿を私は見ることになる。
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