夢中

@miyabioto

寝起き

 鳥の囀りが聞こえる。嫌というほどに快晴で朝から僕の気持ちは滅入った。朝から爽やかでいなくちゃということを押し付けられているように感じる。そんな気持ちのいい朝を掻き消すように屋根の上に留まっているであろう烏がカーカーと鳴いた。うるさいけど、気怠い僕の気持ちを肯定してくれている気がして悪い気はしない。ぼーっと天井のひじきみたいな模様を眺める。どうしてこんなに顔がカピカピなんだ?窄めたり伸ばしたりして顔をほぐした。目も重い。そして熱い。僕は寝室の鏡へ向かった。自分の顔は今どうなっちゃっているんだろうか?怖い気持ちとほんの少しの好奇心を持って鏡の前に立つ。顔には涙の乾いた跡があって、目はパンパンに腫れていた。こんな目じゃ誰の前にも立てない。揶揄われるどころか心配されるだろう。ただ寝ていただけなのにこんな酷い見た目になってしまった。何が原因だ?そうやって頭の中をぐるぐるさせる。あぁ、そうだ。何だか後味の悪い夢を見たことを思い出してさらに気持ちが沈んだ。どんな夢を見たかは思い出せないのが気持ち悪い。とにかくなんだろう、悲しい気持ちになるような、感情がぐしゃぐしゃするようなそんな夢だった。こんな顔じゃ外には出歩けない。幸い、今日は休みだから安心だ。とにかく少しでも目の腫れがひく方法をネットで漁る。二重幅も酷いことになってる。これは1日でどうにかなるものなんだろうか?はぁとため息をつくと同時にお腹がグゥーとなった。取り敢えずご飯を食べよう。エネルギーをチャージしよう。

 冷蔵庫から納豆とキムチを取り出す。即席の味噌汁にお湯を注ぐ。毎日同じ顔ぶれ。家族や友人からは、毎日同じもので飽きないの?と言われるけれど全く飽きない。口は臭くなるけどこれが僕にとってのお気に入りの朝食だ。ずずーっとわざと音を立てて味噌汁を啜る。子供の時には母親に注意をされて泣く泣く普通に飲んでたけど、今は一人暮らし。思う存分音を立てる。啜るとより美味しくなる気がしてやめられない。ただ毎朝こんな感じでずずーっとしていると、誰かと食事に行った時にもうっかりやってしまうことがある。目の前に座っている会社の上司や後輩に白い目で見られて、やってしまったと反省することも多い。1人でいる時の癖をなかなか人前で完璧に隠すのは無理そうだ。普段なら1パックで済ませる納豆だけれど、今日はまだまだお腹が空いていたので贅沢に2パック目を空ける。タレをかけてからしを落とす。何回か軽く混ぜて湯気の立つ白いご飯にかけていく。白米の甘い香りと納豆のクセになる香りが合わさったら最高だ。でも僕には最終兵器がある。キムチだ。白米と納豆のナイスコンビにアクセントを加えてくれる。ハフハフとご飯を頬張るたびに口から漏れ出る湯気は幸せだ。こんな些細なことで幸せを感じられるのは素直に嬉しかった。

 幸せな気持ちからふと我に帰る。パンパンに腫れた目のことを思い出す。冷やして温めるか。ソファーに寝転び何度も冷やしては温めるを繰り返す。かれこれ1時間繰り返した。流石に良くなっているだろうと洗面所へ向かう。うーん、まぁ寝起きよりはマシか。このくらいなら外へも出歩けるだろう。楽なスウェットのセットアップに着替えて、帽子を深く被る。太陽の光がすごい。眩しい。泣き腫らした目は太陽のせいかヒリヒリした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る