「帰還の約束」 許しの旅(中編)

⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ 影の森への道 ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎


セリアは灰色の荒野を抜け、光に導かれるまま歩き続けた。冷たい風が背後で吹き荒れる中、前方には薄暗い森が広がっていた。


巨大な古木がねじれた枝を広げ、森全体が黒い霧に覆われている。その異様な静けさは、まるで森そのものが息を潜めて彼女を見つめているようだった。


「ここに行けというの…?」


光の筋は迷うことなく、森の中へと消えていった。セリアは震える手を握りしめ、ゆっくりと一歩を踏み出した。


⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ 過去の足音 ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎


森の中は薄暗く、冷たく湿った空気が肌を刺すようだった。何かが背後でひそひそと囁く音が聞こえ、セリアは思わず振り返った。


「誰か…いるの?」


応える者はいない。ただ、足元の枯葉を踏む音が響いた。


一歩、また一歩。振り返るたびに気配は近づいてきた。


やがて、霧の中からぼんやりとした人影が現れた。その姿は、幼い頃の セリア自身 にそっくりだった。


「…私?」


幼いセリアは無表情のまま、冷たい目で彼女を見つめた。


「どうして私を見捨てたの?」


その問いに、セリアの心臓は激しく鼓動した。


⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ 最初の試練 ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎


幼いセリアは静かに歩み寄り、彼女の目をまっすぐに見つめた。


「私はずっと待っていた。怖くて、寂しくて、助けてほしかったのに…あなたは私を見ないふりをした。」


セリアは息を呑んだ。忘れかけていた記憶が蘇る。幼い頃、誰にも打ち明けられなかった孤独と、誰かに理解されたいと願ったあの日々。


「私は…どうしていいか分からなかった…!」


幼いセリアの瞳が、苦しみに満ちた怒りに変わった。


「分からなかったじゃない!逃げただけよ!」


激しい怒声とともに、闇の霧が一気に広がり、二人を飲み込んだ。


セリアはその場に倒れ込み、涙を流しながら震えた。過去から逃げ続けた自分を突きつけられ、胸が締め付けられる。


だが、その時、光の筋がぼんやりと浮かび上がった。


「…逃げるのは、もう終わりにしよう。」


セリアはゆっくりと立ち上がり、震える手で幼い自分の頬にそっと触れた。


「ごめんね…ずっと君の声を無視して…でも、もう逃げないよ。」


幼いセリアの瞳が揺らぎ、涙があふれた。闇の霧が消え去り、森の中に温かな光が差し込んだ。


次回予告:

⬜︎ ⬜︎ ⬜︎ 忘却の深淵 ⬜︎ ⬜︎ ⬜︎

過去の自分と向き合ったセリア。しかし森はさらなる試練を用意していた。「忘却の深淵」に眠る真実とは…?

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