「帰還の約束」 許しの旅(前編)
⬜︎⬜︎⬜︎ 灰色の荒野 ⬜︎⬜︎⬜︎
冷たい風が吹きすさび、遠くには果てしない灰色の地平線が広がっていた。空には太陽も月もなく、ただ薄暗い雲が空一面を覆っている。そこは「忘却の荒野」と呼ばれる、何も生まれず、何も変わらない世界だった。
荒野をひとり歩く少女がいた。名は セリア。だが、その名も、かつての記憶も、すべてが薄れていく。彼女の心には深い孤独と、理由の分からない罪悪感だけが残っていた。
「私は…なぜここにいるの?」
声に答える者はいない。歩いても歩いても、風に吹かれた砂が足跡を消していく。進んでいるのか戻っているのかも分からないまま、彼女は荒野をさまよい続けた。
幻影のささやき
突然、耳元に冷たい声が響いた。
「お前は、何を求めている?」
セリアは驚き、周囲を見回した。しかし、そこには誰もいない。ただ遠くから、何かがこちらへ近づいてくる音がした。
霧の中から現れたのは、ゆがんだ影のような存在だった。その顔はセリア自身の姿に見えた。
「お前はすべてを失うべき存在だ」
その影は、憎しみに満ちた目で彼女を見つめた。胸が締めつけられるような痛みが走り、セリアは声を失った。逃げようとしたが、足が動かない。
「何をしようと、過去は消せない」
影は冷たく言い放ち、消えていった。セリアはその場に崩れ落ち、震える手で顔を覆った。
希望の光
涙が頬を伝い落ちたその時、遠くからかすかな光が見えた。
セリアはゆっくりと顔を上げ、その光に引き寄せられるように立ち上がった。荒野の中に一筋の光が差し込み、まるで彼女を導いているようだった。
光の中から、穏やかな声が響いた。
「立ちなさい。過去から逃げるのではなく、向き合うために。」
セリアは震えながらも一歩を踏み出した。その先には、何かが待っていると確信した。
こうして、彼女の 「許しの旅」 が静かに始まった。
次回予告: 「影の森への道」 - セリアは光の導きに従い、かつての自分と向き合う試練の地へ足を踏み入れる。彼女を待ち受ける最初の試練とは…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます