「魂の灯火(ともしび):愛を求める永遠の旅」

三分堂 旅人(さんぶんどう たびと)

「帰還の約束」 序章(前編)

魂は光に包まれながら、過ぎ去った人生のすべてを振り返っていた。喜びも、悲しみも、出会いも別れも、まるで美しい織物のように絡み合い、どれも欠かせない一部だった。


しかし、心の奥底に、何かが足りない感覚が残っていた。


「どうしたのかい?」

優しい声が光の中から響いた。それは魂を深く知る存在、すべての愛の根源だった。


魂は少し戸惑いながら答えた。

「すべての体験を通して多くを学びました。でも、まだ何かが完成していないような…。」


声は静かに問いかけた。

「何を完成させたいのだろう?」


魂は思いを巡らせた。思い出したのは、過去の人生で愛する人を失った痛み、誤解された悲しみ、赦せなかった瞬間。そして、自分を愛することの難しさだった。


「私は愛を与えることを学びました。でも、完全には受け入れられなかった気がします。もっと深く、自分自身をも愛せるようになりたいのです。」


声は柔らかく語りかけた。

「それは深い学びだね。愛することも、愛されることも、同じく神聖な体験。だが、それを学ぶには新たな旅が必要だ。」


魂は静かにうなずいた。「その旅がどれほど困難でも、私は恐れません。」


声は微笑むように続けた。

「何も恐れる必要はない。すべては君自身の成長のためにある。だから、足りないと感じるのは、まだ学び続けたいからなんだ。」


魂の光は少しずつ強く輝き始めた。可能性の無限さを思い出したのだ。


「では、どのような人生を選ぶ?」


その問いは魂に深い静寂をもたらした。無限の選択肢が眼前に広がり、愛の学びを深める旅の計画が静かに形作られていった。


こうして、新たな物語の幕が上がろうとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る