あなたは「産まれてきてくれてありがとう」言われたことがあるだろうか?
外道禅太郎
第1話 産まれてきてくれてありがとう
あなたは、これまでの人生に於いて誰かから、其れは主として、自分を直接的に産んでくれた母親
ないしはそれに近しい存在としての父親から「産まれてきてくれてありがとう」
そんな言葉で、今この瞬間現存するあなたという存在に対してこの上ない、至極の言葉としての謝意を向けられたことがあるであろうか?
ましてやそれが、身内でもない、ましまして何処の馬の骨ともわからぬ者から伝えられたことがあるだろうか?
もし伝えられた経験があるとして、その言葉には、「誰が」言ってくてた言葉なのか?
そこにこそ価値があるのだろうか?
私はもちろん、身内や血縁関係すらない赤の他人に斯様な言葉を受け取ったことなぞないと断言できるのであるが、「誰か」に向けては、何度か言ったことがあるような気がする。
いや、数日前に言った、言ってしまったのか、言わされたのか、私の語彙力の無さからそう言うしか他になかったのか、あるいは「私は無条件にあなたを愛します。今までもこれからも。」というセリフの言い換えとして、この世に生を受けて様々な苦難などがありながら立派に育った32歳女性として、私の眼前にそのお美しい身姿で現れてくれた、その事実に対しての謝意なのか。
どれもが正解であり、不正解であるのかもしれない。
ただ、人間の感情について、合ってる間違ってる、正解不正解などの評価を与えることは愚の骨頂であって、何らの意味も持たない。
そんな基礎知識はこれまで嫌というほど学んできたつもり。
それでも、そんな臭くもあり何なら激臭も漂いつつ、よもや相手との距離感があってこそ輝く”かもしれない”言葉を簡単に口できてしまったのはなぜか?
解明するところからこの物語は始まる。
あなたは「産まれてきてくれてありがとう」言われたことがあるだろうか? 外道禅太郎 @GoldenRM
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