記憶
冬の寒い日に布団を剥ぎ取られたかのような喪失感と共に目が覚めると、昔は真っ白だったであろう薄汚れた天井が目に入った。
ここは何処だろうか?
そんな事を考えた時、頭の中に今まで味わったことの無い激痛と共に知らない記憶が流れ込んできた。
ここは孤児院で、俺の名前はジャック。
好きな食べ物は、たまに出る肉の切れ端が入ったシチュー。
夢は冒険者だが、強くなるための努力などしておらず、せいぜいが冒険者ごっこと言いながら枝を振り回す程度。
頭痛が治まる頃には、そんなどうでもいい事から必要そうなことまで、今まで生きてきたであろう10年の記憶が植え付けられていた。
どうやら俺は転生してしまったらしい。
幸い、現代日本で生きてきて少しはアニメなども見ていたし、前世に未練もなかったので現状はすんなりと理解できた。
そんな俺が最初に思った事は「あぁ、また生きなくてはならないのか」だった。
夜闇に舞う蝶(連載版) @josefyinu
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