猿はベートーヴェンを超えられるか

木田りも

序章



これは、ぼくが書いた作品です。
ぼくは、ぼくであって、僕ではないです。




________________穴。

 


(現代から聞こえた微かな音)電波はどこまで届くのでしょうか。こんな果ての果てまで届いているでしょうか。この小説が投稿される頃、僕はここにはいません。(言ってみたかったこれ笑)だから、この小説が読めてたらいいなぁって僕は思います。そして、こんな作品がいつか世に出て有名になって、僕が称賛されていたらって思うのです。これも一つの僕の夢です。今までもこれからもずっと。僕は風を浴びて思わず身体を震わせた。あと少し、もう少しで……
。

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出鱈目に猿が演奏したピアノがベートーヴェンのように素晴らしい音楽を作ることが出来るか。

そんな実験が行われたらしい。テレビか何かで見た淡い記憶がある。ドレミが出鱈目で流れていた記憶。ぼくの耳が受信した出鱈目な音楽。どこかで聞き馴染んだ音楽。歓喜の歌。日本でいえば年末によく聞く。もうすぐ1年が終わるような壮大な音楽。その壮大さに当時大学生の、名もなき小説家かぶれのぼくは憧れた。自分もいつか自分だけの作品を生み出したいと思った。だからぼくはこんな話を作り出す。僕をぼくに改め、気持ち新たに。




________________穴。

 


当時の僕は、自他共に認める自堕落な大学生だった。やる気があるのは1日の5秒くらい。大学の講義を決める際、1限目を入れたは良いものの、出席なんて1回もしなかった。というより出来なかった。高校生までは朝の7時に起きることなんて容易だったのに、大学生になって2週間経っただけで、2時間も起きる時間が遅くなった。自分のことを情けない存在だなぁって思っていた。それでも自由というか、どこか毎日が希望的だったのは、4年間という妙に長い時間のおかげだった。まだ3年と300日、まだ3年と250日あるって思えるのは、なんだか心に余裕をもたらしていた。今では恐ろしく早く感じる時間が、当時は有り余っているように感じた。それは今でもぼくの中で、思い出として美化されている。だからこれは序章なのだ。その4年間が終わり社会に揉まれる僕。荒波だった〜。あれもこれも全て荒波。

取り消す。取り消す。入力を取り消した。
大学生だった僕をリメイクした。僕は、社会人1年目になった。全てが覆った。朝型人間になり、今までの堕落が嘘みたいに真っ直ぐ進み始めた。たぶん僕は欲のない人間になりたいんだとおもう。欲もなく、プライドもなく、かと言って自分がないわけではないそんな存在。自分の中で満足いくものを他人に迷惑かけることなく完成させられたらこれは凄いことでしょう。僕はそれを目指しますよ。

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