静かな公園
紙の妖精さん
第1話
空がどこまでも広がり、雲が少しずつ風に流されながら、淡いグレーから白へと変わっていく。気温は穏やかで、空気はひんやりとした季節の匂いを含んでいた。街の通りには、時折行き交う人々がいるけれど、どこかしら静かな雰囲気が漂っている。
足元に目を向けると、歩道の脇に小さな草が生えている。その葉は、少し黄ばんで枯れかけているけれど、まだ地面にしっかりと根を張っていた。通り過ぎる風が、その葉を軽く揺らす音が耳に届く。風の中には、土や落ち葉の香りが混じり、過ぎ去る季節の気配を感じさせた。
歩みを進めると、目の前に少し開けた場所が現れ、道が広がっていく。舗道の端に、細い木々が並んでいて、風がそっと触れる枝が遠くの景色に小さな影を落としていた。歩道の隅には、赤や黄色の落ち葉がちらちらと舞い落ち、足元に軽く積もっていて。足音がその葉を踏む音に変わり、心地よいリズムが生まれる。
周りの建物は、どこか懐かしさを感じさせるレンガ造りのものが多く、時折小さなカフェや雑貨店が軒を連ねていた。そのどれもが、過去と今が重なり合うような空間を作り出していて、どこか落ち着く。道の角を曲がると、見慣れた街の風景が広がり、少しだけ歩みを速めたくなった。
道の先に見えるのは、公園への入り口。鉄の門が静かに閉じられていて、その上には絡みつくツタが葉を広げている。公園に向かう人々は少なく、その場所が自分だけのもののように感じた。
その入り口をくぐると、ひんやりとした空気が肌に触れる。周囲は、ほとんど音がない。木々の間をぬって差し込む陽の光が、地面に小さな模様を描いていた。小道を進むと、足元に黄色い落ち葉がカサカサと音を立てる。歩くたびに、その音がかすかに軽やかに響く。周りの草木の緑は、深い色合いになり、涼しげな雰囲気を漂わせていた。
木々の葉はまだたくさん残っていて、風に揺れながら、時折ひらひらと落ちていく。枝が細かく震える度に、枝葉が空に舞い上がり、地面に散らばっていった。その一つ一つが、まるで小さなダンスをしているように見える。空には、薄い雲がゆっくりと流れていて、光が柔らかく、優しく地面を照らしていた。
公園を少し歩くと、正面に噴水が見えてくる。水が静かに流れる音が、空気に溶け込むように響く。太陽の光を浴びた水しぶきは、きらきらと輝いていた。噴水の周りには小さな虹がかかり、その虹の端が、どこか不思議な世界へと続いているように見える。噴水のそばには、いくつかの石のベンチが置かれていて、木陰に座っている人々の姿もあって、どこかのんびりとした、落ち着いた空気が漂っていた。
風に揺れる木々を眺めながら、ふと立ち止まって深呼吸をする。ひんやりとした空気が淡い。風が木々の間を通り抜け、葉の音がさらに大きくなったり、小さくなったりしながら耳に届く。遠くからは、鳥のさえずりや、遠くの道路から聞こえる車の音もわずかに聞こえた。
公園の中央には、小さな川が流れていて、その水は澄んでいた。川の水面に反射する木々の緑や空の色が、絵画のように美しい。水の流れが静かに音を立て、時折小さな波紋が広がった。川辺には、いくつかの石が並んでいて、その上に座ったり、足をつけたりすることもできる。川の音と風の音が、心地よく混ざり合い、穏やかな時間を作り出していた。
さらに歩くと、少し離れたベンチに座っている人々が見え、草むらの中で遊ぶ小さな犬が、元気に跳ね回る姿も見えた。空気が清々しく、肌に触れる風、木々の間に差し込む光がやわらかく、心地よかった。
手を伸ばし、バッグから温かい飲み物の入ったボトルを取り出す。手のひらにじんわりと温かさが広がった。飲み物を口に含むと、ほんのりと甘さが広がり、喉をすっと通っていく。その感覚がなんとも気持ちよく、なんだか少しだけ、周りの風景も、さっきよりも鮮明に存在するような気がした。
公園の片隅に咲く花々が色とりどりに揺れ、そこからもひとしおの安らぎを感じる。遠くの景色に目をやると、木々の間にほんの少し見える空が、薄い青色に染まってきた。しばらく歩いた後、徐々に日が傾き、光が柔らかくなる時間帯。空気が少しひんやりとしてきて長いスカートが少し硬く揺れるようだった。
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