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「・・・・おまっ・・・余計な情報をボソッと呟くなよ!!!」




凄く焦った顔をした青さんが三山さんに「すみません、こいつは昔からの知り合いでして」と謝り、初めて見るくらい顔を赤くしている。




そんな青さんのことを三山さんは優しい笑顔で笑っていて。




「まだ谷中さんのことが好きなんですか?

それなら、谷中さんはまだご結婚されていないようですし・・・「あ、それはナイですね。」




青さんがキッパリと否定した。




「僕、犬がどうしても苦手でして。

だから谷中社長と上手くいく未来は付き合ったばかりの高校2年の頃から存在していませんでしたね。」




「ワンちゃんのどんな所が苦手なんですか?」




「・・・・え~~~・・・っと、ハッキリ言いますよ?」




「はい。」




「“構って構って構って構って”って来る所ですね。」




「なるほど。

私はそこが可愛いんですけどね。」




「好きな人は好きなんでしょうね。

僕には到底理解出来ませんが。」




「じゃあ、星野社長は谷中さん自身のことを嫌いになったわけではないんですね?」




「そうですね。」




「え・・・!!!?」




思わず驚きの声を出してしまった私に青さんは怖い顔でパッと私のことを見た。




“余計なことは言うなよ?”




そう言われているのは分かる。




分かるけれど・・・




私は言った。




ハッキリと言った。




「“ああいうキツい顔をした美人な女が笑ってる時はめちゃくちゃ可愛いけど、たかが犬のことで怒りまくってる時の顔は可愛くなくてその顔が全然好きになれない”って言ってたのに。」




「・・・そんな大昔の発言というか失言をなんで覚えてるんだよ・・・!!!」




テーブルに大きく項垂れた青さんの代わりに店員さんを呼び、ドリンクバーをとりあえず3人分注文した。




「青さんって彼女さんのことを好きになる理由も嫌いになる理由も毎回同じで、私が知っている限り毎回同じ台詞を言ってましたよ?」




「そんな、こと、は・・・・あった・・・!!!」




「青さんが好きになる女の人はみんなキツイ顔をした美人さんでしたし。」




「ああいう顔がタイプなんだよ・・・。」




「そういう女の人が笑った時のギャップが良いんですよね?」




「そうそう、めっちゃ可愛い。」




「向こうの財閥の、さっきいた女の人はそこまでキツい顔じゃありませんでしたね。」




「そうなんだよ、あともう少しキツい顔だったら“まあタイプだからいっか”と付き合って・・・・・・って、マジでやめて、仕事の邪魔するなって・・・っっ」




青さんは怒った顔ではなく笑いを堪えようと頑張っている顔で私に笑い掛けてきて、たまに見せるこの顔が凄く好きだったことを改めて思い出す。




キュン──────...と胸が苦しくなる。




苦しくなって、泣きたくなって、でも笑った。




青さんのタイプではない私のこういう顔でも笑った方が“可愛い”と青さんが思ってくれるのなら、私は頑張って笑い続ける。




「ドMのくせに俺をイジって楽しみやがって。」




「うん、楽しい。」




それは本当で。




それは嘘ではなくて。




私は楽しい。




苦しいくらいに切ない気持ちもあるけれど、私は青さんといると楽しい。




青さんといると昔から凄く凄く楽しかった。




そう思いながら青さんと向かい合ってお互いに笑い続けていると・・・




「主人は私が地味で冴えないから、私のことを嫌いになっちゃったんろうな・・・。」




三山さんがポツリと呟いた。

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