1-2 ニーチェ vs キルケゴール
奥義の激突
轟音が収まらぬ中、白い影が立ち上がる。血に染まった白衣を纏ったキルケゴールの体から、青い炎が不安定に明滅していた。
「まだ見せていなかったな」嗄れた声が闇を震わせる。「実存の、その先を」
月が赤く染まり始める。
「この能力『実存』の真髄───」白衣の哲学者の体から、青白い炎が竜巻となって立ち昇る。「人間の無力さに絶望し、それでもなお、跳躍する力だ」
巨大な十字架が、キルケゴールの背後の虚空に浮かび上がる。
「ニーチェ!貴様の永劫回帰ごときに、この絶望を受け止められようか!」
「面白い...!」ニーチェの黄金の瞳が、深淵の底で輝きを増す。「見せてやろう、私の運命への愛を」漆黒の哲学者の周りの空間が、まるで万華鏡のように歪んでいく。
「私の『永劫回帰』」ニーチェの体から、黒い炎が金色に変わり始める。「全ての瞬間が永遠に繰り返される。それこそが───」
「狂気の思想!」とキルケゴールが吠える。
「ああ、最も重い思想だ」ニーチェの周りで虹色の光が渦を巻く。「だからこそ、この瞬間に全てを賭ける!」
「面白い!受けてたとう!」
二つの魂が、限界を超えようとしていた。
ニーチェが漆黒のコートを翻す。【永劫の輪より立ち上がる意志よ否定より肯定へと昇華せよ超人への道を、今描け!】「運命愛・永劫創造!」
キルケゴールが両手を天に掲げる。【絶望の淵より目覚めし魂よ全ての仮面を打ち砕き今こそ示せ、跳躍の真実を!】「実存・究極解放!」
深淵そのものが割れる音が響いた。光の渦の中で、二つの叫びが交差する。
そして───
決着
まばゆい光が闘技場を包み込む中、二つの力が激突していた。
青く輝く十字架と、金色に燃え上がる時計の環。キルケゴールの絶望と、ニーチェの永劫回帰。
「これが...!」キルケゴールの青い炎が、ニーチェの金色の波動を押し返す。「人間の真実だ!」
だが。
「ああ、確かに美しい」ニーチェの口元が、かすかに歪む。「その絶望こそが、私の求めていたものだ」
「なに...?」
突如、金色の波動が青い炎を飲み込んでいく。
「見えるか、キルケゴール」ニーチェの声が響く。「お前の絶望こそ、最も重い永劫回帰の対象なのだ」
瞬間、二つの力が螺旋を描き始める。だが今度は、青い炎が金色の渦に吸収されていく。
「まさか...私の絶望を...」キルケゴールの体が、膝から崩れ落ちる。
「その通りだ」ニーチェの瞳が、深淵の底で輝きを放つ。「私は絶望すらも肯定する。それこそが───」
「超人への道...」
キルケゴールの青い炎が完全に消え、白衣の哲学者が倒れる。しかし、その表情は穏やかだった。
「敗北を認めよう」キルケゴールが呟く。「だが、これは終わりではない...新たな跳躍の始まりだ」
ニーチェは静かに頷く。「ああ、お前の絶望は、私の永劫回帰の中で永遠に生き続ける」
満月が、勝者に銀色の光を投げかける。深淵は、新たな高みに達した魂を見つめていた。
実況:「決着!勝者、フリードリヒ・ニーチェ!」歓声が轟く
*
闘技場の大型ビジョンがある男を映し出す。彼は、純白のトガに身を包み、階段に腰を下ろす「人々は皆、洞窟の中の影絵を見ている」
青い空を見上げ呟く「永遠不変のイデアこそが、真実の姿」「私が示そう。この拳に宿る光で、永遠の真理を」
パリのカフェ。煙草の煙が漂う「人間は、自由の刑に処せられている」
彼は、窓の外の群衆を見つめる「あらかじめ定められた本質など存在しない。我々は、自らの選択によって自己を創造する」
レンズの曇った眼鏡越しに「お前の『永遠の真理』こそ、最大の幻想だ」
二つのインタビューが交差する「イデアは、この世界の影の向こうにある」「実存こそが、全ての始まりだ」
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最強哲学者バトル ─転生じゃないけど時空を超えて古今東西の賢者と戦います─ 財前草平 @zaigensohei
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