ビッチ好きの俺に好意を寄せるのは学校一のビッチ……ではなくその取り巻きの処女かよ!!

いくかいおう

第1話 はじまりの夜

 俺には好きな人がいる。

 クラスにドチャクソ好みの女子がいる。


「え〜、そりゃないっしょ〜」


 机に座って取り巻き二人と会話している金髪サイドテールの女。

 そう、こいつだ。

 風船でも詰め込んだんかってくらいパッツンパッツンの巨乳に、隠す気ゼロでありながらしっかりと存在価値を示しているミニスカ。

 なにより、電柱かよってくらい『ぶっとい』太もも!!


 クラスメイトの寺王ジオウシロ。学校一のドエロ女だ。


「おっ、シロいんじゃ〜ん」


 別のクラスのチャラ男が教室に入ってきた。

 そしておもむろに、後ろからシロのデカパイを、揉みやがった!!


「あんっ♡♡」


「相変わらずデケ〜!!」


「ちょっ、朝から欲情してんなし〜」


「なぁ、あとで頼むよ」


「だ〜め。先約がありま〜す」


 取り巻きの前だろうが他のクラスメイトの前だろうが、お構いなしかよクソ。


 ちなみに先約は俺じゃない。

 しかしそう、そうなのだ。

 何を隠そう、寺王シロはどえらいクソビッチなのだ。


 そこがまた興奮している自分がいる。

 だって俺は、ビッチ系AVの見過ぎでビッチが大好きになった性癖歪み野郎だから!!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「まぁ、会話すらしたことないんだけどなぁ」


 夜、バイト先のコンビニにて、商品を棚に詰めながらボソッと呟いた。

 悲しいような、そこがまた良いような。


 ん、コピー機の方で客が叫んでいる。

 どうやらバイト仲間の女の子が、ジイさんに怒鳴られているようだ。


 いっつも黒いマスクをした、大人しい女の子。

 名前は是田ぜたミユ。

 ロクに喋ったことないけど、確か同い年だったかな?


 黒く長い髪。目はいつも前髪で隠されていて、常に猫背な、ちょっと薄気味悪い女の子だ。


「あ〜、お客様、どうなさいました?」


「あ? 兄ちゃん、このコピー機壊れてんだよ!!」


「どれどれ」


 調べてみたが、壊れてなかった。

 老人がうまく扱えていなかっただけだった。

 まったく。


 老人が帰ったあと、是田さんが頭を下げてきた。


「あの、ありがとうです」


 すっげー小さい声。幽霊に囁かれたんじゃねえかと思ったね。


「いいよいいよ。こういうのは助け合いでしょ」


「…………」


「困ったことがあったら何でも言ってね」


「…………」


「なに?」


「いえ、どうも」


「???」


 本当によくわからん、この子は。

 どうせなら寺王シロが同じコンビニでバイトしてくれてたらよかったのに。

 そしたら先輩風吹かせていろいろ教えてさ、あわよくばさ……。

 なんつって。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 バイトが終わり、一人暮らしのアパートに帰宅する。

 電気をつけて、タンスの上に飾ってあるお地蔵の置物に手を合わせる。


 死んだお婆ちゃんの形見だ。毎日拝めば願いが叶う、的なアイテム。

 まぁ信じちゃいないが、本当ならラッキーだから手を合わせているのだ。


「お願いしますお地蔵さん。どうか寺王シロとお近づきになれますように」


 地蔵の頭を撫でる。

 瞬間、ピカッと地蔵が光った。

 な、なんだ、まさか本当に、オカルトパワーがあるのか?


 もう一度触れてみる。

 え、また光ったんですけど。


「ていうか触ると光る仕組みなだけじゃん!! 知らんかったわ今まで!!」


 と叫んでいると、呼び鈴が鳴った。

 誰だ、こんな時間に。


 …………もしかして?


 もう一度地蔵を見やる。

 触ってないのに、光っていた。


 こ、これは、まさかまさかだったりするのか?


 本当にお地蔵パワーが発生して、寺王シロがやってきたって話?

 お婆ちゃんの形見が、俺の夢を叶えてくれる??


 ド淫乱ギャルが陰キャの家に突撃してわいわいやってくれる的な?


 やばい、これ以上ないくらいにドキドキしてる。

 インターホン越しに返事をしてみる。


「は、はい」


『夜分遅くにごめんなさい。是田です』


「へ?」




 玄関扉を開けてみる。

 本当に是田さんだった。

 制服姿の是田さん。


 なんで是田さん? ていうか、はじめて制服姿を見たけど、同じ高校だったんだ。

 バイト中はバイトの制服だから、気づかなかった。


「あの、その、単刀直入にごめんなさいなんですけど」


「あ、はい」


芦間あしまくんって、その、私のこと好きなんですか?」


「なにいってんだこいつ」


 ……………は?



 あ、ごめん。思考とセリフが逆だった。

 やり直すわ。


「……………は?」


 なにいってんだこいつ。

 是田さんは小っ恥ずかしそうにしながら、言葉を続けた。


「だ、だって、クラスでもいつも私の方を見てるし、バイト中も、優しくしてくれるし」


「クラス?」


 俺のクラスに是田さんなんかいないぞ。

 もしかしてこれホラー展開なん? 後ろで包丁を握ってたりは……してないか。


 だいたい俺がいつも見ているのは寺王シロで……。

 あれ? 待てよ。


「あっ!!」


 俺の脳内に閃光が瞬いた。

 まるで宇宙が誕生したかのような圧倒的衝撃!!

 いる、確かにいる、是田さん、クラスにいる!!


 寺王シロの取り巻きの一人だあああああああ!!!!


「ってなんでだよ!! お地蔵パワーでシロが来るんじゃないのかよ!! 取り巻きの方かよ!! アウラの部下の糸使いぐらい絶妙なポジションじゃねえか!!」


「え? え?」


「ご、ごめん。あ、あの、俺は……」


「それでね、私のことが好きな芦間くんにお願いがあるの。困ったことがあったら、何でも言ってねって、言ってたし」


「お願いって?」


「わ」


「わ?」


「わた」


「わた?」


 ふぅ、と一息ついたあと、是田さんはキリッと俺を見つめた。

 覚悟を決めた人間の目だった。








「私の処女を奪って、私をドエロクソビッチにしてほしいのっっ!!」





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

※あとがき

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