奏で、僕らのVIVE LA

七雨ゆう葉

プロローグ

 いつか、僕も。

 あんな風になれたらって。

 そう、思ったんだ。

 あの日。高校二年の春。

 自らの手で創り出した「二重人格」

 本来の僕とは別の――「ボク」

 そうすることでしか。

 鬱屈した思春期なんて、乗り越えられない。

 いや。やってられないって。

 そう、思ったから。


 幼い頃に見た、とある音楽番組。

 そこでのトークコーナーで、あるミュージシャンが語っていた。彼は当時の僕から見ても極めて華奢で、男らしさとはまるで正反対な容姿。そして力なく、終始淡泊な雰囲気。

 だがそれでいて、どこかミステリアスな妖艶さと美しさを醸し出していた。


『ボクは学生時代、友達もいなくて、ずっと家に引きこもってばっかりの子で、暗い人間だったんです。それはきっと、今も変わらない』

『けどこうやって、ステージの前に立って、みんなの前で歌っている』

『歌ってる時の自分も、普段の自分も……どちらも、素のボクなんです』

『人間なんて千差万別。社会や周囲に合わせようとして無理をしたり、取り繕ったり。そこまでして自分を変えようだなんて思わなくたっていい。環境さえ変えれば、それで』

『ボクのように、こと。そうして踏み出した一歩のおかげで』

『今ボクはこうして――。音楽を、人生を楽しめています』


 彼が誰だったかはもう、覚えてはいなかった。

 けれどふと、そのシーンが脳裏をよぎることがあった。それも、何度も。何度も。

 でもあの日。の皆と出会った、あの春の日。僕はようやく気が付いた。

 その言葉は、僕にとって。

 信じられる「希望の光」となっていたことに。

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